テニスの王子様
ヘタレに誘われました
仁王は、私とメアド交換した後から、学校内では話しかけてこなくなった。うん、平和だ。
そのうち「ご主人様と犬」の噂も消えてくれるだろう。人の噂も75日だから。
その代わり、私のメールボックスはほぼ仁王からのメールで埋まりそうになってきている。
なんのことはない、「おはよう」「おやすみ」に始まり、「部活行きたくない」「今なにしちょるん?」「一緒にサボるぜよ」なんてメールも来る。大概は無視するのだが、さすがに部活をサボられるのはいただけないので、「応援してるからちゃんと部活出なさい」と送れば、ハートマークがびっしりついた「うん!」の返信メールが送られてくる。
「香澄ちゃん、最近楽しそうだねぇ。」
「そうかな?」
そんなクラスメートの言葉に、苦笑いをしながら、私はバチンと携帯を閉じた。
平和なのは、学校の中でだけだけども。
「香澄ちゃん、俺と遊びに行かんか?」
「行かない。」
「プリッ……。」
実は仁王と家が然程(さほど)離れていないという事実を最近知り、行動範囲がとても被るので、こうやってコンビニなんかではち合わせることがままあった。
コンビニのビニール袋をガサガサといわせながら、私はマンションへと向かう。その後ろを付いて回る仁王。…こりゃ当分「ご主人様(以下略)」は消えないな、と変な確信を持って歩き続けた。
「のー行こうなりー。俺香澄ちゃんの言う事聴いて学校では香澄ちゃんに会ってないし部活も頑張ってるぜよー。」
仁王は私の服の裾をくいくい、と引っ張っておねだりする。
くぅ…っ!仁王の奴、どこでそんなスキルを……!!うっかり可愛いと思ってしまうじゃないか!!
「行かないってば。仁王のその銀髪、目立つもん。」
「髪の色のせいなんか?!」
「それもあるけど、仁王って結構有名でしょ?どこ行っても女子に絡まれるだろうし、私が面倒なこと嫌いなの知ってるよね?」
にっこりと笑ってやれば、仁王は更にしゅん、としょげた後、何やら思案顔になった。
大体にして、仁王と友達でも何でもないのにどうして出かけなきゃならないのよ。
そうこうしているうちに、マンションのホールに着き、私はそのまま仁王と分かれた。
仁王が気持ち悪いくらい大人しくて、何だか嫌な予感がするのは気のせいだと思いたい。
ピロリン♪
夕方、携帯がメールを受信したようで、私は手を伸ばした。確かに仁王からのメールが多く、無視したいが、たまに別な人からのメールも来るので、一応チェックしない訳にはいかない。
だけど、差出人は案の定仁王だった。
はぁ、と溜息を吐(つ)き、本文を読んだ。
件名:遊んで
――――――――――
日曜日一緒に遊んで。
絶対に俺だってわから
ないようにするから。
なんで仁王ってこんなに必死なんだろうね。そうまでして私と遊びたいってどういうことだろう?ドッグランにでも連れて行けばいいのかしら。
件名:Re;遊んで
――――――――――
いいよ
こんなに必死な仁王を無視する訳にもいかなくて、数分悩んで返信した。すると、仁王から電話が掛かって来た。今しがたメールをしたばかりなので、居留守を使うことなんてできず、通話ボタンを押した。
「もしも」
『香澄ちゃん!!』
「うるさい。」
通話が繋がった途端、耳元で大きな声。しばいたろか。
『あの!あの!』
「切るよ?」
『ごめんなさい!』
幾分か小さくなった声に、溜息を吐(つ)けば、電話口から『うぅっ!』とびくついてる声が聞こえた。怒ってると勘違いしたようだ。まあ、若干怒ってはいるけど。
「で?何?電話までしてきて。」
『あの、俺、嬉しくて……!』
こんな事で嬉しくなるなんて安い奴。
「プッ…。」
『香澄ちゃん…?』
「なんでもない。で?どこで待ち合わせ?」
______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あとがき
どんどんほだされてます(笑)
2012.07.19
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