テニスの王子様 ヘタレと交換しました 私が仁王の尻尾を引きずり回してテニスコートに連行したのは、瞬く間に、学校中に知れ渡ることになった。 私と仁王の関係が「ご主人様と犬」として。 発信源は誰だ(怒)。 でも私も私だ。いくらブチ切れていたからって、そんなことするなんて。ああ、私のアホ。 もちろん、私は単なる生徒Aですから、そんな主従関係だろうと気に喰わない輩はいる訳で。びしびしと殺気やら羨望やら畏怖やらの眼差しを感じる今日この頃。 ―――きっと何か事情があるんでしょ?脅されたとか…。そうでなかったら香澄ちゃんがテニス部に関わるなんてしないもんね?私達は香澄ちゃんの味方だからね!! 癒してくれたのはクラスメート達でした。ありがとう!私、ホントにこのクラスで良かったよ!!嬉し涙を流して、私はクラスメート達と抱擁を交わした。 しかし、そんな癒されてハッピーチャージされた私のハートは昼休みには空っぽになった。 「秋山さん、おる?」 ホントに懲りないね、お前は。 いそいそとお弁当をクラスの女子と広げようとしていた時、例の如く仁王が尋ねてきた。迷惑しか感じないのだが。 三度目ともなれば、みんな「またか」くらいにしか感じなかったらしいのと、「ご主人様と犬」が知れ渡っていたからか苦笑いで「ご主人様を呼んでるよ」なんて取り次ぎをされる始末。 はぁ、と溜息を吐(つ)いて、私は大人しく仁王について行った。幸せなんて、始めに仁王に関わった時点で無くなってますけど、何か? 「ねーねー香澄ちゃん、メアド教えてなり〜!!」 「却下。」 人気のない屋上に着くなり、仁王は私を名前呼び。しかもメアドを寄越せ、だと…? 「駄犬にご褒美なんてもったいない。」 「プピーナ…。」 しゅん、としょげる仁王。もう、騙されない。そうやって情けを掛けまくって今の状態なんだから。 「仁王君、私言ったよね?人前で関わるなって。仁王君には耳が無いのかな?」 「だ、だからせめてメアドが知りたかったなり……っ!!」 仁王の言い分はこうだ。 学校や人前で私と関われないのだから、メールくらいさせてほしい、と。 「だからって、昼に教室に来られたら元も子もないでしょ?」 「で、でも、犬が主人のとこに行くのは自然n」 「何か言った?」 「何でもないなり……。」 仁王君は私の雰囲気が段々とイライラしているのを悟ってか、正座している。 “おすわり”状態。 これ、他の生徒が見たら、またあの噂が信憑性を増すんだろうなぁ……。 そんなことを思いながら、携帯を取り出した。 じゃら、とストラップが揺れる。 私は可愛いモノが好きだ。そして、一度付けると外せなくなるので結構な量のストラップが付く事になる。だから、ストラップ同士が揺れてぶつかり合ってじゃらじゃらと鳴るのだ。 「香澄ちゃん…?」 「赤外線、できる?」 「っ!っ!!でき、できるっ!!!」 仁王は嬉しそうな顔で自分の携帯を取り出していた。 何の飾り気もない、シンプルな青色の携帯。 携帯は所謂(いわゆる)自分の分身と言っていい。プライベートな物だし、個人情報の宝庫だからだ。ブクマとかメールとかデコメ素材とか。 こんな真逆なのに、どうして仁王は私が気に入ったんだろう…? 「送信完了」の文字を確認して、私は携帯を閉じた。 「メール、送ってきてもいいけど、全部には返信しないからね。」 「うん!うん!」 「それと、ちゃんと部活には出なさいね。私のこと追いかけまわしてるせいで腕が落ちたなんて言われるの心外だから。もし練習サボったらメアド変えてフィルターかけるからね。」 「わかったなり!」 ウキウキと仁王は、自分の携帯をさすっていた。 たかがメアドでそこまで嬉しいものか…? でも、仁王の態度に負けて、メアドを教えてしまった私は相当甘いんだろう。 ______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ あとがき ここまでこぎつけるのが長かったですかね……? でも、やきもきしながら進んでいく話も面白いと思います← 所詮は雑食なのでwww 2012.07.12 [*前へ][次へ#] |