テニスの王子様
ヘタレを泣かせました
何故だ。何故こうなった。
私は平和に過ごしたいだけなんだけど!
「秋山さん、ちょお付き合うて。」
私昨日、貴方に“近寄るな”と言った筈なんですけど。どうして貴方はまた私のクラスに顔を出してるんですかね?!!
「で?一体何の用?」
連れてこられたのは裏庭だ。
しかも私が仁王雅治を発見した場所。こいつ一体何がしたいんだ?
「俺、女子にあんなに厳しくされた後、優しくされたの初めてなんじゃよ。」
「……は?」
「今までの女は、俺がこういう奴だって解ると手厳しく言うだけで、優しくされたことなかったなり。だから、秋山さんに優しくされて嬉しかった。」
えーと。
つまり私が招いた結果と言うこと、か?
うわぁぁぁぁぁぁ!!!しくじった!!情けを掛けるんじゃなかったよ!!
仁王雅治は何を思っているのか解らないけど、キラキラとした目で私を見ている。
やめてやめて!そんな目で私のこと見ないで!!!
「…って!ちょっと待って!じゃあ仁王君がこういうのだって知ってる女子がいるってこと?!」
「…ここにはいないなり。それにそれやったの、母さんと姉ちゃんぜよ。」
ちくしょおおおおおおお!!
学校に仁王の本性知ってる奴がいるならそいつになすりつけようと思ったのに!
「秋山さんになら、俺も話し易いと思うぜよ。だから、俺の話、聞いてくれんかの?」
あまりにも弱々しい懇願に、私は。
折れた。
「い、イイデスヨ…?」
私の肯定に、仁王雅治は満面の笑みで応えた。そして、打ちひしがれている私の隣にいそいそと座った。
「ちょ、距離近い。」
「聞かれたくない話だから、小さい声で言いたいなり。」
「……ぐっ!…もう、好きにして。」
ホントはこんな密着するみたいなのは迷惑なんだけど、了承してしまったのだから仕方が無い。
これは子どもだ。もしくは犬。男は嫌いだが、子どもや動物なら大好きだよ、私!!
「…で?仁王は何を聞いてほしいの?」
仁王は視線を落とし、ギュッと膝を抱えた。
まるで自分を護るように。
「…あのさ、辛いなら吐いちゃいなよ。そのために私がここにいるんだし。」
「うん……。実はのう…。」
仁王の話は、テニスのことについてだった。
今仁王はスランプに陥っていて、自分のテニスを見失いかけている、という内容だった。
周りからペテン師と言われている自分が、本当の自分なのか。実際の自分はこんなにも自分に自信が無いのに、と。
思春期特有のアイデンティティの問題。
「この間泣いてたのもそれ?」
「ああ…、情けないじゃろ…?」
すん、と鼻をすする音がする。
その姿がいじらしくて、私は仁王の頭を私の胸に押しあてた。たいして大きくもないけど。
「ちょっ…?!秋山さん?!!」
だけど、ヘタレな仁王にはそれだけでも充分な刺激になってしまったらしい。声がすごく焦ってるのと首まで真赤だ。ごめん、仁王。
「泣きたきゃ、泣きなよ。」
「秋山さん…?」
「悔しいんでしょ?!情けなくなんかない!それだけ熱中してるからできない自分がもどかしいだけでしょ?!泣いたっていいよ!泣いたって、仁王が恥ずかしがることなんて一つも無い!」
「そう、か…?」
「そうなの!大体、仁王が泣き虫なのなんて私始めから知ってるし!私の前でくらい見栄張る意味なんてないでしょ?!」
「そうか……。」
そうして、仁王は静かに泣いた。
私の制服の胸元をしっとりと濡らすくらいに。
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あとがき
このにおちゃん、泣いてばかりだwwwww
2012.06.10
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