テニスの王子様
エピローグ
大切な人だから、このままでいるのは嫌だった。
だから、私は桜ちゃんに向き合って謝った。
桜ちゃんに謝って、謝って、謝って。
許してくれるまで、何度も何度も。
初めは取りつく島もないくらいだったけど、桜ちゃんは少しずつ私の言葉に耳を傾けてくれた。やっぱり双子だよね。ずっとこのままでいいと思っていなくて、お互いに悪いって思っていたから。
少しずつ、少しずつお互いに向き直って、話をした。そうしたら、桜ちゃんは憑きものでも落ちたかのように。髪を切ってごめん、とか、好きな人を盗ってごめん、とかって謝った。
私は桜ちゃんが大好きだから、全部いいよ、って返したら、桜ちゃんは泣きだしてしまった。
私の可愛いお姉ちゃん。
丸井君と、幸せになってほしいと、今なら心から思える。
それは、私に幸村という存在があるからに他ならない。
幸村が、私の愚かな行いも、浅ましい感情も、全て受け入れてくれたから。全部吐き出させてくれたから。そうでなかったら、私は今頃どうなっていただろうか。決して今のような晴れやかな気持ちにはなれていなかったと思う。きっと、暗い闇に囚われて、一生動けずにいたかもしれない。
そう思うと、幸村には感謝の気持ちしかない。
「幸村、ありがとう。」
「どうしたの?藪から棒に。」
「幸村に会えなかったら、私、今幸せじゃ無かったから。だから、ありがとう。」
「……そう。」
幸村は、私の隣で柔らかく微笑む。
その笑みにつられて、私も笑った。
「ところで香澄。一体いつになったら俺の事名前で呼んでくれるの?」
笑顔で幸村は私に問いかけた。
若干背後に黒いモノが見えるのは気のせいだと思いたい。
「え…っと、…何か、今更で恥ずかしいというか…、慣れないというか…。」
「何も恥ずかしがることじゃないだろう?俺達は恋人同士なんだから。ほら、呼んでごらんよ。」
逃がさない、とでも言うように、幸村は私の腕を掴んでいる。
あれ?こんなこと前にも会ったような気が……。
それよりも、幸村は私が名前を呼ぶまで放してはくれないだろう。それこそ何時間でも何日でも。例えじゃないのが悲しいことだけど。
「………い…。」
「ん?何だって?」
「……精市…。」
「よくできました。」
ふわり、と頭を抱えて撫でられた。
恥ずかしさと、嬉しさとでそのまま私は幸村の胸に顔を埋めた。
深い悲しみの底から救い出してくれたのは、貴方でした。
貴方を、好きになって、良かった。
______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あとがき
全15話でした。
長編と呼ぶにもおこがましいですが……。
敢えて言うなら中編ってやつですね(^_^;)
人間誰しも間違うことってあるんだよな。
それを認められるか否かでその人の真価って問われるのだと思います。
なんて、語ってみたり。
2012.06.05
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