テニスの王子様
秘密
「ちょ、香澄!どうしたの?!」
きれいさっぱりショートカットになった私を見て、楓が駆け寄って来た。クラスメイトはいきなり雰囲気の変わった私に対して驚いたようだった。
「ん…ちょっと、イメチェン?」
皆の反応を見る限り、昨日私がしたことは知れ渡っていないみたいでほっとした。
桜ちゃんも、丸井君に他言無用と言ったって今朝教えてくれた。私が丸井君を騙した、なんて、裏を返せば、彼氏でさえ桜ちゃんと私を見分けられない、というレッテルにしかならない。そんなこと、桜ちゃんのプライドが許さなかった。
「皆、おはよう。」
ざわめきの中、訊き慣れた声が教室の入り口から響いた。幸村が登校してきた。
私は、昨日のことを思い出し、ボンっと顔が赤くなった。
「どうしたんだい?朝から騒がしい……秋山、さん?」
「…おはよう、幸村。」
私は、幸村と顔を合わせ辛くて俯いたままだった。昨日、幸村の告白を聴いたのもそうだけど、幸村が誉めてくれた髪がばっさり無くなっていることに、何を言われるのかと胸が苦しくなっていた。
「……ショートも、似合うね。」
ぽん、と頭に手を乗せられ、一言。
それだけで、救われた気がした。
「あぁ〜でもあんなに綺麗な髪だったのに〜。色入れるくらいでよかったんじゃないの?」
「そう、かな?でももうすぐ夏だし暑いかなって。」
笑って、視線をずらして、心を隠して。
誰にも言えない、4人だけの秘密。
この日を境に、幸村は私にちょっかいを掛けてこなくなった。
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あとがき
ちょっと短かったですね…。
2012.05.18
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