テニスの王子様 理解不能な行動 私の心は血で汚れている。 自分の心を自ら傷つけて、血まみれで立っている。 一体いつになったら、私はこんなことをしなくても良くなるんだろう……。 「…ん…。」 頬に触れた温かいものの感触で意識が浮上した。 私はあの後、保健室で(少しのつもりで)ベッドに横になっていた。保健室に入った時、保健医が血相を変えて私をベッドに寝かせたのも一因だけど。…てか私、そんなに酷い顔してたのか…。 寝返りを打ってぼんやりと目を開けた時だった。 「あ、起こしちゃったかな?」 ベッドサイドにいたのは、紛れもなく幸村だった。(こいつに“君”なんてつけなくていい)一瞬夢でも見ているのかと思ったが、私が幸村の夢を見るなんて胸糞悪いこと絶対にしたくない。布団の下で私は自分の腕を思い切りつねりあげた。 ――痛い。 これは現実だと思って、ほっとしたのと、何でこいつがここにいるんだよ、という憤りとがごちゃ混ぜ状態になっていた。 「…何か用ですか?人の寝顔見て、楽しいですか?」 私は、自分でも解るほどの冷たい声で幸村に話しかけた。正直、話したくもないけれども、黙って寝顔を見ていたことは許せない。 「いや、顔色悪かったから、気になってね。そしたら君が涙をこぼしていたから拭き取ったんだけど。」 幸村は悪びれもせず淡々とここにいる理由を述べた。よくもまあ、いけしゃあしゃあとそんな事が言えたものだ。誰のせいで気分を害して寝ていたと思っているのか。まあ、夢見が悪かったのは、一様に幸村のせいじゃないけれども。それにしても、涙を拭き取るなんて、気持ち悪くないのだろうか?だって、体液だよ?気持ちのいいもんじゃないでしょう? 「…気持ち悪いことしないでください。」 「気持ち悪い?」 「他人の体液なんて、気持ち悪いでしょう?」 「そうかな?涙だろ?綺麗じゃないか。それに俺は、君に関しては潔癖症じゃないから。」 「は?何言って……?!!」 ちゅ。 ………。 い、今、何っ……?!! 目尻に触れた柔らかくて温かいモノ。 「やっぱりしょっぱいね。」 そして、眼前に舌舐めずりをする幸村。 こ、こいつ……!! 目尻にキスしてきた!! 「貴方、一体…っ!!」 「急に動くと体に悪いよ。」 穏やかなんだけど、有無を言わせない口調で幸村が詰め寄ろうとした私の体を押しやった。 「……一体、何のつもりよ……!」 私は怒りを隠せなかった。いや、隠さなかった。こんな奴に愛想を振る必要はない。こいつは、私の傷を抉(えぐ)り、その反応を見て楽しんでいるんだから。 「他人の不幸は蜜の味って言うだろ?俺、キミが傷ついてるの見るの、好きなんだよね。」 カッとなって私は右腕を振り上げた。そしてさすが運動部と言うだけはある。腹立たしいことに、ひらりと避けられた私の腕は虚しく空を切った。 「最っ低……!!」 もう、この場に居たくなくて私は布団を整えてカーテンを開いた。教室に戻ることを伝えようとしたが、保健医はどこかに行ったのか不在だ。最悪だ。保健室には幸村と私しかいない。とりあえず、教室に戻る旨をメモに書き記して机の上に置き、保健室を出た。 出た、んだけど。 「……何で一緒に来るのよ…!」 「教室が同じなんだから仕方ないだろう?」 悪びれもなく幸村は言い放つ。こいつ、口から出まかせを良く言えたもんだ。 「言っとくけど、必要以上に私に関わらないでちょうだい!はっきり言って迷惑以外の何物でもないから!!」 私は少しでも距離を取ろうと、ずかずかと廊下を歩いた。 だから、私は気付かなかった。 私の後ろでのんびりと歩いている幸村が、優しい表情で微笑んでいたことに。 ______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ あとがき すれ違い。 そして好きな子程いじめたい。 ワンパターンだったかしら……(-_-;) 2012.05.01 [*前へ][次へ#] |