テニスの王子様
姉の彼氏
「香澄ちゃん、学校行こう!!」
「桜ちゃん、今行くよ。」
桜ちゃんは私の双子の姉。私達は何事もなければ仲の良い姉妹だ。少なくとも私は、桜ちゃんが好き。
「あ!ブン太――!おっはよ!!」
「よう!桜!」
桜ちゃんが見つけたのは赤い髪をした丸井ブン太君。桜ちゃんの彼氏。
そして、私が好きだった人。
「香澄もはよ!」
「おはよう、丸井君。」
笑顔、引きつってないかな…?私は、桜ちゃんが好きだから、丸井君が好きだから、二人が幸せになってくれてよかったと思える。確かに、寂しい、というか悔しいけども。まだ私は、丸井君を好きな気持ちを引きずっているから。
「でね、ブン太……。」
間髪入れずに桜ちゃんが丸井君と腕を組み、話しながら私の前を歩く。私はその光景を見たくなくて俯(うつむ)く。そしていつも、耳に入る情報も眼から入る情報も遮断したくて、「先に学校へ行く」という選択をすることになる。
「桜ちゃん、丸井君、私今日ちょっと用事があるんだ。先に行くね。」
「えー?香澄ちゃん、昨日もそんなこと言って一緒に登校しなかったじゃない。」
桜ちゃんはぶーたれる。そんな膨れ面も可愛いんだけどね。同じ顔なのに、桜ちゃんがすると全く違う人に見えてしまうから不思議だ。可愛いんだけど、残酷な桜ちゃん。私、これ以上醜くなりたくないの。
「ごめんね。ていうか、せっかくのラブラブカップルに混ざろうなんて普通は思わないんだよ。」
冗談めかして言うと、桜ちゃんも丸井君も照れたようにはにかんだ。
「じゃあ、行くね。」
たたっ、と私は掛け足になる。早くこの場を立ち去りたくて。
熱くなる目頭を誰にも、特に桜ちゃんには見られたくなくて。
私は自然と全力疾走して学校へ向かった。
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あとがき
彼氏候補は誰でもよかったのですが…。ブンちゃんだと書きやすいだけです。
2012.04.22
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