テニスの王子様
ごめんなさい
傷つけた人をそのままにしておくのは性に合わなくて。
芥川さんから何とか逃れ、教室に入ったと同時に本鈴が鳴った。
…セ、セーフ…!
席に着くと鳳君がこっちを見たけど、視線が合うとぱっと反らされた。
―ズキン。
やっぱり、傷、つけたよね…。
折角、親切にしてくれてたのに、恩を仇で返した様なものだもの。
放課後も、鳳君はそそくさと部活へ行ってしまった。
初めに避けたのは私なのに、避けられるのがこんなに辛いなんて思わなかった。
「どうしよう…。帰ろうかな…。でも、後に伸ばしちゃうともっと拗(こじ)れるし…。」
うじうじと悩んでいると、携帯のバイブに現実に引き戻された。
5回バイブはメールだ。
ダイレクトメールだったら腹立つな〜なんて思いながら携帯を開いた。
発信者は芥川さんだった。
件名:眠いC〜(-_-)zz
z
――――――――――
膝枕しに来て(^^)
テニスコートにいるか
らね〜(^^)/
…何て身勝手な…。
しかもテニスコート?
芥川さんテニスコートに用があるのかな?
誰か知り合いがいるのかな?
余り近寄りたくない場所ではあるが、鳳君のこともあるし、意を決して私はテニスコートへ向かった…。
足取りは重いけどね…。
テニスコートに着くと相変わらず女生徒のすごい黄色い声援が響いていた。
私は構わず芥川さんを探した。視線を一回り巡らせばベンチに寝そべっている姿を見つける。この人、何処ででも寝れるのかなぁ…?
「芥川さん?」
「んあ、香澄ちゃん来てくれたの〜?超嬉C〜。」
「呼んだのは芥川さんじゃないですか。」
半ば、呆れながら私は芥川さんを見た。
「じゃあ、ここ座って〜。」
「あ、あの、私ちょっと鳳君に用があるんですけど…。」
「鳳に〜?何で?」
「えと、同じクラスで…。」
「ふーん。」
何だか芥川さんの機嫌、悪いみたい。
寝たりないのかな…?
「鳳〜!」
しばらくすると、鳳君が足早に駆けてきた。
「芥川さん、どうし……っ!」
視界に私を捕らえた鳳君は言葉に詰まり、気まずそうにしていた。
「香澄ちゃんが鳳に話あるってさ。」
芥川さんはかなり気だるそうだ。
そんな芥川さんを後目に私は鳳君に向き直った。
「鳳君…ごめん。」
私は頭を下げた。
「え…、ちょっと…。」
「私、鳳君に失礼なこと言って、考え無しだったから、鳳君を傷つけた。だから、謝りたいの。」
鳳君が戸惑っている。
本当、優しいんだから…。こんなの、鳳君が悩む必要無いのに。
コレは、私が打算的だから。
自分自身が楽になりたいから。
だから、許しが欲しいだけ。
許さなくてもいいの。
それはそれで鳳君の気持ちだから。
偽善っぽいのもわかってる。
私はずるいから、鳳君の優しさにつけこもうとしてる。
「あの、さ、俺、確かに秋山さんが言う通りの人間だと思うんだ。…でも、俺はそれを悪いとは思っていない。誰かの力になりたいって思うんだ…。」
「うん、…。ごめんね。あんまりにも鳳君が私にも他の人にも親切だから、だから…心配、だったの…。迷惑かけてるんじゃないか…って…。」
「…もう、謝るのやめようよ。秋山さんは転校したばかりでまだ助けが必要なんだから、俺を頼ってよ。迷惑だなんて思わないよ。」
鳳君は爽やかな笑顔で許してくれた。
私はほっとしたような、モヤモヤするような変な感じだ。
私は、許して欲しいと思いながらも許さないで欲しかった。
鳳君を傷つけたことには変わりないから…。
でも、鳳君は許してくれた。
だから…、私はもう彼の気持ちを傷つけない。
「明日からもよろしくね!」
「もちろんだよ。」
二人で笑いあった。
鳳君の優しさに救われた。
空気が柔らかい。
「俺のこと忘れないで欲しいC〜…。」
背後からのしっと何かが寄りかかってきた。
「ふぇっ?!」
気が付けば、肩に腕が乗り、若干人を背負っている様な状態だ。
「あ、芥川さん!重いです!」
「話終わったんでしょ〜?約束〜!」
芥川さんは駄々っ子の様にぎゅうぎゅうと私を抱きしめる。
ちょっと苦しいけど…。
芥川さんって欲望に忠実なのかな?
男の人に失礼だけど…、可愛いと思ってしまう。
「秋山さん、約束って?」
鳳君が心配そうに私を見た。
「あ、えと、ね、今日の昼休みに芥川さんに捕まってて…放してもらう条件で芥川さんが呼んだ時に膝枕してあげないとならないの。」
「そうそう。だから膝枕〜♪」
「わかりましたから、放して下さい。私が座らないと膝枕出来ませんよ?」
そう言うと、芥川さんはすぐに私を解放した。
私は手近なベンチに腰を下ろした。
「はい、いいですよ。」
ポン、と膝を叩いて芥川さんを促す。
「秋山さん、しなくていいよ。」
まさに芥川さんが脱力して私の膝に寄りかかろうとしたときだった。
「鳳…いい度胸してるC〜…。」
「芥川さんこそ。」
な、何か空気悪くない?
険悪通り越して真っ黒なんですけど?!
「芥川さんはこれから試合だから大丈夫だよ。」
「A〜、そんなこと聞いて無いC〜。」
お、重いよ…!!
空気が重すぎるよ〜!!
誰か助けて!
「おい、慈朗!相手してやる!」
「A〜!跡部が相手してくれんの〜?やるやる〜!!」
芥川さんは疾風の如くテニスコートを駆け抜けた。
呆気に取られたが、これって…跡部って人が助けてくれたんだよね…?
「鳳君…。」
「あ…、今日は帰っても大丈夫だよ。あの状態なら芥川さんずっと起きてるから。」
「あ、うん。鳳君ありがとう。」
「え…?俺何も…。助けたのは跡部さんだよ…。」
「ううん。鳳君が私のこと考えてああしてくれたんだもん。嬉しかったから…だからありがとう。」
鳳君は少し顔を赤くしてはにかんでくれた。
鳳君が笑ってくれてまた嬉しくなった。
「あ、跡部さんってどの人?お礼言わないと…。」
「え?秋山さん…跡部さんのこと知らないの…?」
鳳君は心底驚いていた。
「…うん。」
「この間会ったよね?」
「でも名前聞いて無い…。」
「あ、そうか…。今芥川さんと試合する人だよ。」
鳳君が指差した方向を見ると…。
あの時の俺様外人さんだった…。
お礼…。
言いに行かないと駄目かな…?
______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あとがき
やっと更新です(>_<)
何とかチョタと仲直りしました(笑)
ジロちゃんが出てきてちょっと黒対決しました(笑)
次はどうしようかな…。べ様にお礼は言いにいきますかね。
2008*9*21
2009*11*23修正
2012.04.27修正
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