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テニスの王子様
頼むから日本語で話しましょう


ちょ、何勝手なことしてんのーーー?!










避けて避けて避けまくってきた。

あんなホスト集団に囲まれて生活なんてどうかしてる。
私は平穏無事な毎日を送りたいだけだ。

テニス部員ってさ、200人近くいるんだよね。
この学校の約12%。
10人に1人強。


居すぎだよ!


何故か、私秋山香澄はテニス部総出で追いかけられています!


「居たぞ!」
「こっちだ!」
「あのチビか?」










チビって。


チビだってさ。


確かに150そこそこしかないさ。


だけどさ。





気にしてるんだよ、バカヤロぉぉぉぉっ!!

「チビって言うなあぁぁぁっ!あんたらがデカ過ぎんだよぉぉぉっ!!!」

私は逃げながら悪態をついた。
何か、あれだよね。





負け犬の遠吠え。





いやいやいやいや!
まだ負けてないから!
弱気になっちゃ駄目だって!

とにかく何でこうなったのか皆目見当もつきません。

だってさ、今日はいつも通り学校来て、テニス部を避けつつ授業受けて、昼休み芥川さんに呼び出しくらって膝枕して、また授業受けただけだって!

何処をどうしたら放課後にこんな事態になるのか教えて欲しい。





走りに走って曲がり角。

「あれ?秋山さん?」

「鳳く…!」

神様かと思ったけど、私ちょっと待て。





鳳君もテニス部じゃん!
曲がり角を180度方向転換した。

「絶対逃げ切るんだからあぁぁぁっ!」

「ちょ、待って!」

待てと言われて誰が待つと?
自ら危険の中に飛び込めと?


冗談じゃない!!


「俺は捕まえないから!理由も言うよ!」

鳳君の言葉に速度が緩む。
あっと言う間に鳳君は私に追いついた。


「まず確認。秋山さんが逃げたのって“テニス部”に追いかけられたからだよね?“俺”が追いかけたから逃げたんじゃないよね?」

「え?……あぁ、うん。鳳君が嫌で逃げた訳じゃないよ。」

そう言うと鳳君が破顔した。
そうだよね。
よろしく宣言したのに避けるなんて凹むもん。


そりゃあ、ベッコベコに!


「実は、跡部さんから通達があったんだ。秋山さんを連れて来いって。」

「跡部さんが?…何で?」

「うん、何て言うか、…。」

急に鳳君が口籠る。





「マネージャーになって欲しいんだって。」




What?
若しくはWhy?
きっと今の私には??マークがいっぱい飛んでる。


「俺としても秋山さんにマネージャーやってもらいたいんだけど…。」

「や、ちょっと待って。一体どこをどうしたらそんなことになるのか全っ然わからないんだけど!いつ・何処で・誰が・何を・どうして・どんな風にそう言う事態を招いたのか5W1Hで簡潔明瞭に教えてください。」


「昨日、テニス部の部室で忍足さんから提案があったんだ。君をマネージャーにしないかって。それに便乗したのが跡部さん、芥川さん、日吉。これだけテニス部に靡かないのも珍しいし、ミーハーじゃないなら仕事をちゃんとやるだろうし、何より物怖じしないところが気にいったって…。」

若干名知らない名前が出ましたが…。

「丁重にお断りしたい…。」

「断るにも跡部さんに言いに行かないと。」

「…じゃあ、連れてって?私跡部さんが居るとこわかんないし…。」

「うん。こっち。」

歩き出す鳳君の後をついていった。
何だか結局跡部さんの思惑通りになってるみたいで癪だけど…。





「失礼します。」

着いた先はテニス部の部室。
中を見て私は思わず鳳君が開けたドアを閉めた。


だって!
何だか綺麗どころが勢ぞろいしてたけど?!
しかも、マジで部室?!
部室ってさ、もっとカオスなものじゃないの?!
一瞬だけど、視聴覚なんかにあるようなバカでかいスクリーンが見えましたよ…?

「秋山さん?」

扉を中から開けて鳳君が心配そうに私を見ていた。

「や、無理。全身がその空間に入るのを拒否してるから。」

私は開いた扉を再び閉めようとした。
でもそこはほら、男女の差ってやつ?
ものの見事に鳳君の手によって部室内に招かれましたよ(ToT)


中に入れば見知った顔がちらほら。


「ようやく来たか。俺様を待たせるとはいい度胸だな、アーン?」

「女は度胸ですから。」

もうどうにでもしてくれ。
私は生きた心地がしないよ!
受け答えは得意の脊髄反射です。
自分で何言ってるかよくわからないよ!

跡部さん以下テニス部員は固まってる。

珍獣見るような目で私を見るな(>д<)


「まぁいい。秋山、お前テニス部のマネージャーやれ。」

「何故に命令形?」

「俺様だからだ。」

「意味わかんないです。嫌です。」

断られると思わなかったんだろう。
跡部さんは目を見開いていた。


「跡部振られたなぁ。なぁ香澄ちゃん、マネならへん?」

「跡部さんと一緒のこと言ってるだけじゃないですか。なりません。止めてください。」

眼鏡関西人さんはあろうことか私の肩を抱いた!!それを無理くり退けた。

「ツレナイやん。」

「釣られる気は毛頭ないです。」

「侑士だって駄目じゃん。」

あ、ウサギのヒトだ。

「なぁなぁ、お前面白いな。マネやれよ!」

「やりません。」

そんなキラキラ笑顔でも駄目!
…あぁ!しょぼくれた!
って!駄目駄目!それ反則!
情に流されたら駄目!
耐えろ、私!


「激ダサ。嫌がってんだから無理に誘うなよ。」

宍戸さんが天使に見えました。
この人もしかして唯一の常識人?

「A〜、香澄ちゃん、マネやってよ〜。」

「今後一切膝枕無し。」

「嘘嘘!やらないで!」

芥川さん変わり身早いな!
部活より寝ること優先…。
まぁ、芥川さんらしいけどねぇ?


「芥川さんの膝枕、まだやってるの?」

「え?聞くとこそこ?」

意外なところで喰ってかかったのが鳳君だった。

「まだやってるの?」

あれ?
鳳君、何か雰囲気違くない?

「答えてくれるよね?」

笑顔なのに瞳が笑ってない。

「やってます。今日の昼休みもしました。」

「そう…。じゃあやっぱりマネージャーやろうよ。」

「じゃあって何?!」

素敵な笑顔でサラリと言わないで!

「やらないって言ってるじゃん!」

ふと視界に入ったキノコ頭。

「あ。」

「何だよ。」

この人なら反対するよ!
私この人に悪態ついたもん!

「貴方は反対…」

「秋山さん、そいつは日吉だよ。」

日吉。
マネ話に便乗した人…orz

「何で賛成派?!私貴方に悪態しか言ってないよね?!」

「悪態をつかれた覚えはない。お前を面白い奴だと思っただけだ。」

「貴方Mですか。」

「下剋上だ。」

「意味わかんない。」

て言うかさぁ!日本語話そうよ!
今のところ反対してくれてるのが芥川さんと宍戸さんだけ…。
跡部さんの後ろにいる巨人さんは無言。
ピンチですか?

「ていうか、私もう部活入ってるんですけど。」

「園芸部だろ?とっくに退部届受理されてるぜ?」

「いつの間に?!てか本人の了承無しに?!」

「俺様に不可能はない。」

「そんなこと聞いてませんから!それに皆さん簡単にマネージャーやれって言いますけど、私そんな経験1ミクロンだってやったこと無いですし、第一マネージャーやりたい人なんてそれこそ芋洗いの芋みたいにいっぱいいるでしょう?!」

「ミーハーな子はあかんねん。仕事せぇへんで応援ばかりしよる。」

「応援なら部員かファンで良くね?」

「確かにそうですけど…。」

「救命講習、危険物取り扱い、電検、情報処理、文検、パソコン、シスアド、アロマテラピー…。」

急に跡部さんが何か言い出した。

「マッサージ、心理学、その他もろもろ。そうそうたる資格だな?秋山。これだけあればマネージャーやるのに支障ないな。」

どれもこれも聞き覚えがあると思ったら今まで取ってきた資格の名前か。

「資格マニアか?」

「何で跡部さんがそんなこと知ってるんですか?」

「自分の親の会社の部下の家族構成、プロフィールを得るなんて簡単なんだよ。」


今この人なんつった?


自分の親の会社の部下?


何かその話どっかで…。


「お前がこの氷帝に入れたのは俺様のおかげだろ?」

何その恩着せがましい言い方。


でも確か母さんがそんなこと言ってたな…。


――父さんの会社の社長さんの配慮で、社長さんの息子さんが通っている学校を手配してくれているんですって。


うん、そう言ってた。


「ていうかそれ個人情報じゃないですか!プライバシーの侵害ですよ!私の人権は?!」

「そんなもの俺様の前では塵に等しい。それに既にマネージャーの申請は受理した。お前に拒否権はねえ。」

「横暴!さっきも言ったけど本人の了承無しに何勝手なことしちゃってんですか!!」

「俺様だから許されるんだよ。」





もう、泣いていいですか?!





次の日からも私とテニス部員の追いかけっこは続いた…。





______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あとがき

はい!
王道の無理矢理マネージャー参加です(^^;

まだまだヒロインちゃんは抵抗する予定です。


2008*10*11
2009*4*21修正
2012.04.27修正

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