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テニスの王子様
氷帝学園ホスト部


鳳君のおかげで無事に編入試験を受けることが出来た。
内容も、母さんが言った通り授業聞いていれば解る問題ばかりだった。
私が聞いてる内容なんてたかが知れてるのに…。もしかして私専用に簡単にしてたりして…。
北海道と東京では勉強の進み具合が違うと聞いたことがある。だから習ってないとこが出たらどうしようかと思ったよ…。

「では、採点が済むまで待つように。」

試験官が教室を出て私は一気に力が抜けた。

「マークシートなんて全国統一学力テストくらいしかやったことないよ…。」

そう。
ここのテスト、マークシートだった…。
つまり答え間違えたら即アウト。
どこまでどの様に考えたかは全く無視。

何だかこの学校のことを暗に指しているようで不安だ。
そうでないことを祈るのみ。
気分転換に外の空気を吸いたくなり、窓を開けた時だった。


キャアァァァァァァァァァァァァァァァっ!!


「!?」


耳をつんざく様な黄色い悲鳴。
周り、こんなに五月蝿かったんだ…ここの防音設備スゲー(棒読み)。
声のする方へ視線を移すと馬鹿でかいテニスコートが見えた。

部員と思われる人達が練習しているのだろう。
それにしても五月蝿いな。
部員達はそんな声援に惑わされることなく練習している。
ある意味すごい集中力、なんだろうな…。


「秋山、結果が出たぞ。」

教室に入って来た試験官の声で我に返り開けていた窓を閉めた。

「合格だ。制服やジャージは出来るまで以前の物で良いだろう。教科書は揃えて明日渡す。登校は明日から、クラスはC組だ。」

「そうですか、わかりました。」

「うむ。ところでテニスに興味があるのか?」

「へ?」

「今見ていただろう。」

そう言われてさっきまで見ていたのがテニス部だったのを思い出した。

「…興味、と言うかすごい声援だなぁ…と。それだけテニス部の人達は期待されているんだと思いました。」

「よろしい。では少し見に行かないか?秋山の試験時間が短くなった分時間が余っているのでな。」

私は少し考えて、部活見学するのもいいかな、という結論に達した。

「では、お言葉に甘えます。」


試験官、もとい榊太郎先生は音楽教師だけど男子テニス部の監督もしているらしい。
そして、氷帝テニス部は200余りの部員が存在しているらしい…!

「それじゃあ、先生はそんなにたくさんの生徒を指導しているんですね?すごいです。」

「そんなことはないだろう。」

「いえ!あります!教職に立っている他に部活の監督まで…。先生の統率力がないと出来ません。」

ちょっと力説し過ぎたかと思ったけど、先生は特に気にしてないようだった。



榊太郎(43)。
心の中で悶絶しているのは誰にもわからなかった…。



テニスコートに近づくにつれ、甲高い声援は鼓膜が破れるのではないかと思うくらいすごかった。
人間ってこんなに大きな声出せるんだなぁ…なんて考えながら群がる女生徒を後目(しりめ)に榊先生について行った。


「ほえぇぇ…。」


女生徒から少し離れたところでテニス部の練習風景を見せてもらった。
ルールなんかはわからないけど、みんな一生懸命に小さな黄色いボールを追いかけている。
無駄のない動きと相手の裏をかく戦術。
とても同じ中学生とは思えなかった。

「先生…。」

「どうした?」

「みんな、綺麗ですね…。」

その言葉に先生の眉間に僅かに皺が寄った。しかし、次の私の言葉には驚いていた。

「ひとつのことに一生懸命で、みんな同じ目標を持ってて…。心がキラキラしてます…。」

テニスコートから目を離さずに言った言葉だけど、隣に立つ榊先生が優しい雰囲気だから気分を害してはいないみたい。

「…そうか。」

そう、一言つぶやいただけだった。


「ところで先生、あの女生徒達は何であんなにアイドルの追っかけみたいなんですか?」

榊先生は私の質問に困ったようだった。

「…部員を見たらわかる。」

…部員…?
ぐるり、とコート内を見回した。
それと同時に声援のなかの「アトベ様かっこいい」とか「オシタリ先輩こっち向いて」とか「ムカヒ君可愛い」とか……。
よくよく見れば、端正な顔立ちの人が多い。………やっぱりアイドル?

「顔が良くてテニスが上手くて…、憧れの的…てことですか?」

「…否定はしない。」

「先生、苦労してるんですね…。」

何だか榊先生が可哀想になってきた…。


そんなやりとりをしている中、私達に気付いた人が一人。


「秋山さん!」

急に階下のテニスコートから名前を呼ばれ、反射的に視線を巡らせた。

「あ、鳳君!」

たたっと階段を降りてテニスコートを覗き込む。

「鳳君、テニス部だったんだね。」

「うん、そうなんだ。ところで試験、どうだった?」

「うん、受かったよ!これも鳳君のおかげ。改めてありがとう!」

「鳳と知り合いか?」

私の後に階段を降りてきた榊先生に尋ねられた。

「はい!迷子になりそうなところを助けていただいたんです。おかげで無事に編入試験に間に合いました。」

「そうか、鳳、ご苦労だった。」

「…いえ…。」

あれ?
鳳君の表情が曇った気がしたのは気のせいかな…?

「長太郎、どうした…って、榊監督?用事は終わったんですか?」

鳳君に声を掛けてきたのは帽子を被った人だった。
鳳君が“宍戸先輩”って呼んでたから3年か…。

「ああ、用事は終わったのでな、編入生にテニス部の案内をしていたところだ。」

「…編入…?」

帽子先輩は不審がって私を見た。

「あ、明日から編入します秋山香澄です。」

ぺこりと会釈をしたが帽子先輩は一瞥したあとそっぽを向いてしまった。
…無愛想なのか単に照れてるのかよくわからない…けど、鳳君がなついてるのを見る限りではいい人みたい。


いつの間にか数人の部員が集まり、榊先生に指示をもらってはそれぞれの練習へ戻る。
的確な指示を出す榊先生を見てやっぱり監督もこなしてすごい、と思った。

「お嬢ちゃん、何処の子や?」

不意に関西弁で話を振られて思わず辺りをキョロキョロしだたした。
ここ東京だよね?

「こっちや、こっち。テニスコート。」

視線を下へ向けると眼鏡を掛けた人がいた。

「見たことねぇ制服だな!なぁなぁ、何処から来たんだ?教えてみそ?」

…味噌?
え?
何処語?
しかも何かぴょんぴょん跳び跳ねてる…。
ここ人間界だよね?

「ふん、俺様の美技に酔って言葉も出ねえか、アーン?」

ナンダカリカイフノウナコトバガトビカッテマスヨ?
外人さんは俺様でナルシスト…。
しかもすごんでるよ!
ここ日本だよねえぇぇぇ?!

ちょっと怖いながらも自己紹介だけはしないと失礼だ。

「あ、あの、明日から編入します秋山香澄、です。2年です…。」

自己紹介はしたものの、これだけの美形に見られるのは初めてのことで(一部例外)、私は先生の後ろに隠れる様に移動した。



(榊先生、香澄さんの仕草にノックアウトだーーー!ポーカーフェイスなため誰にも気付かれなかった。)


「お嬢ちゃん、香澄ちゃん言うんか、可愛え名前やな。」

え、この眼鏡関西人いきなり名前呼びですか?
エロスですか?

「じゃあ後輩だな?先輩命令だ!お前ドコまで跳べるか跳んでみそ!」

えーー…やだよ。
言っちゃ悪いが私は普通のヒトなんで平均程度だよ。
兎みたいにぴょんぴょん跳ねられません。
あ、そうか、スイレンだと思えば…やば、可愛く見えてきた。

「先輩達、秋山さんが困ってるじゃないですか!」

…鳳君!
そんな風に優しくされたら女の子はいっぺんに好きになっちゃうよ!
私にとってはいい人決定。

「お前ら激ダサだな。初対面にびびらせるようなことするなよ。」

帽子もとい宍戸先輩もいい人だぁ…(感動)
シャイボーイなだけだった!
他に黙って俺様さんに付き従う背の高い無口な人とキノコ頭の人にじっと見られてた…。キノコの視線が刺さる様で痛い。

そいえばさ、このきらびやかな集団。
何かに似てるんだよね…。

顔が良くて、女の子に(そこそこ)馴れ馴れしくて…。
俺様、エロス担当、可愛い系、親切、シャイ、従順系、ツンデレ…。

「あ。」

思い出した様に声を上げた私に視線が集まった。

「何かに似てると思ったら、ホストだ!」

私の言葉に全員が固まる。
あれ?失言だった?
気まずい雰囲気のなか、私は居たたまれなくなって逃げたかった。

「あー、あはは〜、私そろそろ帰らないとならないので………さよなら!」

私は脱兎の如くその場から走り去った。



その数分後、その場から爆笑の渦が巻いていたことは知るよしもなかった…。





______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あとがき


こんにちは(^^)/

氷帝編第二話いかがでしょうか?
とりあえずジロちゃん以外出てきました。名前は別として…(-_-;)ジロちゃんはきっとお気に入りの場所でお昼寝中ですね…。

次の話からヒロインちゃんが氷帝に通います。
王道に走るかもしれませんが…楽しく書いていきます(^^)



2008*9*15
2009*2*14修正
2012.04.26

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