テニスの王子様
甘党な妙技師
コートに戻り桜の手伝いをしてしばらくすると、周りが薄暗くなってきた。
暖かいとはいえ、まだ夏には程遠く、若干空気が冷えてきた。
「解散!」
おっさんの怒号とも言える大声で平部員は片付けに入る。
私も桜に習ってボールの片付けやコート整備、洗濯物の分別をした。
「香澄、今日はありがとう。日誌書いたら終わりだから一緒に帰ろう?」
「うん!もちろん!!」
桜が日誌を持って、私はそれに付いて一緒に部室へ向かった。
「お疲れ様です。」
ノックを3回したあと桜はドアノブを回して部室内に入っていった。私もそれに続く。
「お疲れ様です。」
「ご苦労だった。」
「今日も助かった。」
口々に桜に言葉を掛けるレギュラー達。
ふぅん。
一応、桜のこと気遣ってるんだ。ちょっと複雑だけど、こき使われるよりは待遇がよくて安心した。
私は桜が日誌を書き終わったらすぐにジュレを食べられる様に用意しようとした。
んん?
確かトロフィーが飾ってある棚の一番右端に置いたはず…。なのに、私が持ってきたらしき箱がない。
「すみません、ここに置いてあった白の化粧箱知りませんか?」
誰ともなしに部室にいる部員に尋ねた。
全員??マークが飛んでいる。
辺りを見回すと、派手な赤い髪が座り込んで後ろを向いている。そろりと近づいて覗き込めば、ガツガツとジュレを食べていた。
「ああああぁぁぁぁ!」
私の絶叫に驚いた赤髪が振り返った。
妙技師・丸井ブン太………!
「ちょ、貴方一体誰の許しを得てそれ食べてるんですか?!」
「部室に置いてあったんだから部員の物だろぃ。」
「ち が い ま す。それは私が桜の為に作ったんです!貴方になんて一口だってあげるつもりありません!!」
私は赤髪が抱えていた化粧箱を取り返した。
4個入れたはずのジュレは残り1個だった。
信じらんない、このブタ!
ワナワナと震えている私を見て流石にまずいと思ったのか、他の部員がフォローを入れていた。
しかし、ブチキレる寸前の私にはそんな言葉届かない。
「折角、桜と一緒に食べようと思ったのに………。」
「お、おい、大丈夫かよぃ…?」
ボロっ。
「「「「「「「!!?」」」」」」」
皆驚いていた。
そうだよね。他人にはちっぽけなことだもん。でも、私には重大なことだったんだ。泣きたくもなるよ…。
「わ…悪ぃ!俺、そんなに大切なものだと知らなくて…。」
赤髪が焦っていた。
案外いい奴かもしれない。
「いいです。過ぎたことは仕方ないです。」
ぐしぐしと涙をハンカチで拭った。
「香澄…。」
「桜…、1個しかないけど食べてくれる…?」
「もちろん食べるよ!」
桜は私からジュレを受け取って一口食べてくれた。
「〜〜〜〜〜〜っ!!美味しい!」
桜が食べて笑ってくれた。
それだけで私は満たされて笑顔になった。
そんな私の様子を見て全員が安堵していた。
「あ、あのよぃ…。」
私が喜びの余韻に浸っている時に声を掛けたのはブタ(酷)だった。
「…何ですか?」
「…お前の菓子美味かった。だから、今度俺に作ってくれないかよぃ。」
しゅん、としたブタ…もとい丸井先輩は何だか可愛かった。ちょっと苛めようかと思ったけど流石に可哀想なので止めた。
「…気が向いたら作ってきます。桜、終わった?」
「え?うん、大丈夫(^^)帰ろう?」
「うん。では先輩方失礼しました。」
私はひとつ会釈をして桜と手を繋いで部室を後にした。
______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あとがき
はい、こんにちは(^^)/
これでレギュラー揃い踏みですねヽ(´∇`)ノ
ブン太さんの扱いが酷くてすみません(o_ _)o
次からはどうしよう…(-_-;)
書きたい話へ持って行く繋ぎを考えてます(^_^;)
では、また。
2008*9*11
2009*4*9修正
2011.01.27修正
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