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秦 斗真
禁じられた遊び




「美乃里!」

夕暮れの帰路にて。

横から不意に高い声。




その声の持ち主はもうわかっていた。




「美乃里、帰り?遊ぼう?」

声のするほうを見ると、斗真くんが公園の柵から身を乗り出してニコニコと笑っている。

「嫌だよ」

「なんでー?」

「なんでって…!」

「もうしないから」


…ウソだ。
悔しそうに睨みつけながらも、かすかに頬を染めた。
なんとなく彼の顔をまっすぐ見ることができない。

バカ。
相手は小学生なのに。

公園に入って、斗真くんのそばに近寄った。
斗真くんは、サッカーボールを蹴って、公園の隅にボールをおいやる。

「…何するの?」

私が転がっていくボールを目で追う。


「実はもう遊んでる最中なんだ」
「え?」

「もーいーかい?」

どこか遠くで声がした。
見ると、隅の木で女の子が腕で目隠しして時を数えている。

「…かくれんぼ?」

私が呟いたと同時に、斗真くんが私を引っ張った。


「ちょ」
「隠れなきゃ!見つかっちゃうよ!」
斗真くんがキラキラと笑って走った。
それがすごく可愛くて。

なんだ、こんな遊びにも一生懸命なんだって…



「ここ入ろう」

斗真くんが、神社の小屋を力いっぱいにこじ開ける。
小屋の中は数個の段ボールが積まれていて、少しかび臭い。
「ここに?二人で?」
「うん。ここボクの取って置きの場所」
「…そうなんだ」
斗真くんが私の背中に回ってぐいぐいと中へ押す。
されるがまま、奥へと入る私。
そして彼も小屋に入ると、扉を閉めた。



戸を閉めてしまうと、中は思った以上に暗かった。
いや、ほぼ真っ暗だった。
斗真くんがどこにいるのかもわからない。
目が暗闇に慣れるまで時間がかかりそうだ。

「斗真く…」
「し!」
彼が即座に小声で制止する。
「静かに。ばれちゃうよ」
「…うん」



でも。
でもね、斗真くん。


すごく体が密着してるんですけど。


きっと真っ暗だから真っ赤になっている私になんて、斗真くんは気付かないだろう。
でも心臓がものすごい爆音をあげていて。
それが体を通して、空気を通して聞こえやしないかと冷や冷やした。
緊張に我慢しきれず、もう一度声を出す。

「あの、ちょ…離……ン」
言ったと同時に、またあのキス。
今度は両腕で彼の肩を押し離す。
「な…」
「黙って」
そう言って、斗真くんがもう一度私に唇を寄せる。
温かくて、柔らかな彼の唇が、私の脳天を突き上げる。
「ん…」
角度を変えてついばむように繰り返されるそのキスの合間に、私の声が淫らに漏れた。
ダメ……
そう心の中で反芻するが、腕に力が入らない。

斗真くんの腕が私の背中に回る。
引き寄せられて、胸がさらに弾んだ。

「はぁ…はぁ…」

唇を解放されて、荒い息が漏れた。
もはやこの小屋の中は、甘い空気で満たされている。

「なんで、キスすんの…」
「美乃里がうるさいから」
そう言って、今度は額に軽くキスをする。
「ヤダ!」
抵抗したが、彼は私の上に乗ったまま動かない。
「ねぇ、美乃里」
暗闇に慣れて、斗真くんの瞳がこちらを見て煌めいているのがわかった。
「なによ…」
こんなに暗いし、私が真っ赤なことはばれてないよね。
胸がドクドクしてるのも、ばれてないよね。


「もういっこ、キスマークつけていい?」
「やっ!」

私が言ったのが先か、彼からの甘い痛みが先か。



どうしよう、私。









…抵抗できないでいる。











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あきゅろす。
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