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秦 斗真
土砂降り



最初から薄暗かった空だけど、もうボールがどこに転がっているのかわからないくらい暗くなってきた。
それは日が沈んだというのもあるけれど、黒く重い雲が空を包み始めたというのもあって。

向かい側に立つ斗真くんは、それに気付いているのかいないのか。



「ねぇ、そろそろ暗いからやめにしない?」
私がボールを蹴って、斗真くんを見る。
「…うん、そうだね」
斗真くんがボールを手で受け取った。


「今日は楽しかった?また遊ぼうね」
私が微笑しながら斗真くんに駆け寄る。
まだ私の肩ほどまでしかない身長。
中性的な顔立ちは、将来美少年になる証拠だと思った。

「あ…雨」

斗真くんが空を見上げて呟いた。
「え?」
そう言って私も空を見上げる。
すると、ポツッと雫が頬を打った。
「本当だ」
私が呟いたのと同時に、雨が強く降り始める。
うわ、これはひどい!
「斗真くん、ひとまず雨宿りしよ!」
私は斗真くんの手を握り、神社の境内を走った。
強い雨は、乾いた土をすぐに潤し、走るたびに泥がはねる。





神社の屋根の下に走り込んで、私と斗真くんは乱れた息を整えた。
ふと斗真くんを見ると、雨を含んで髪が艶やかに光っている。
そして服もびっしょり。

「大丈夫?風邪引きそうだね」
私は彼が寒くないのか確認するように彼の肩に手を置いた。

斗真くんが顔を上げて、ふっと笑った。

「…美乃里こそ」

そう言う斗真くんの視線の先を追う。


「きゃ!」
白い制服は見事に濡れ、下着が透けている。
こんな小学生相手に赤くなる私も私だけど。
両手で胸を隠しながら、ヘナヘナと階段に座り込むと、彼も私の隣に腰を据えた。
「ひどい雨だね」
話題を反らすように、空を見上げてつぶやく。
屋根を叩く強い雨は、一向に勢いを失いそうにない。


「っくし!」
隣で、小さくくしゃみ。
あぁ、やっぱり寒かったんだ。
「大丈夫?斗真くん。無理してでも走って帰ったほうがいいかな?」
そう言って立ち上がる。
けれど、その直後。
「…ヤダ」
そう言って、彼が私の足に抱き着く。
「…斗真くん?」
不思議に思いながら、もう一度しゃがみ込んだ。
この子、イマイチわかんない子だなぁ。
そう思いながら彼の顔を覗き込む。
濡れた髪がやけに色っぽくて、長い睫毛には雨水がついてる。
薄い唇もまだ幼さを残し、肌は妙にきれいで。
俯いたままの、斗真くん。

「…?…斗真く…?」
名前を言いかけて、直後言葉を失った。
……………え?


雨は勢いを失わず、まだ神社の屋根を叩いている。
すっかり真っ暗になった神社の屋根の下で。




私は、唇を奪われたまま―――…


そのまま滑らかに。






後ろへ倒され…た。








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