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小野寺 夏生
強引な…


とても鮮烈な、夢だと思った。
夢であってほしかった。

けれど、確実に「アレ」は現実で。
認めたくないけれど、私あの子と――――…。



「…美乃里?おーい、美乃里ー!」
「うわっっ!!」
チハルが目の前で手をヒラヒラしたのに驚いて、思わずイスからずり落ちそうになる私。
「…どしたの」

夏菜もチハルもきょとんとして…そうだよね、私変だ…。


「…これもアイツのせいなのよ〜!」
「誰のせい?」
言ったあとにハッとする。
…ばらしちゃおうか。いや、バラしたって私悪くないし。

「あのね、チハル、夏菜…」
身を乗り出して話しだす。
2人とも真剣な目をして、頷いた。







「アッハッハッハッハ!!」
「美乃里〜!絶対夢だよソレ!!」
…こんなに、笑われるなんて。

私はムッとした顔をしたまま、容赦なく笑い続ける2人を見ていた。
「ホントだってば〜」
「いや、ありえないし!昨日私夏生くんとメールしたけど、優しくていい子だったし。年下なのが勿体なかったな〜。いや、年下なのがいいんだけどさ」
夏菜が涙を拭きながら言った。
「め、メールしてるの!?」
「え?うん。昨日…聞いたでしょ?」

聞いてないし!!

さすがにキスされたとは言えなかった。
この調子で話してしまえば、私はきっと妄想バカだって笑われそうだ。


「…ホントなのに」

なんで誰も信じないの…?






駅前。
家まではそんなに時間はかからないんだけど、喉が渇いて仕方ない。
結局、喉が痛くなるまで2人に主張し続けたのが、原因なんだけど。

小銭を見つけだして、自動販売機にコインを入れる。
何を飲もうかと指がさまよった。


―――――――けれど、背後から。


ピッ。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
「悩むお前が悪い」

振り向くと、悪魔の夏生くん。
容赦なくキャップをひねる彼。
私100%オレンジジュースは嫌いだったのに…。

「あ〜うまい!お前も飲む?」

もはやキャラ崩壊。
いったいこの人はなんなの?



「…ん?なんだよ」
恨めしそうに彼を見る。
120円の恨みは怖いんだから!

「夏菜と…メールしてるの?」
気になったことをポツッと吐き出す。
「ああ、したよ。ちょっとあっちのオレは疲れるわ」
そう言って、ボトルをごみ箱に放り投げる。
「あ…あっちのオレ…?」
嫌な汗を背にかきながら、私が問う。
「みんなはオレがいー子で、かわいいって思ってるみたいだから、オレはその想像通りの性格を演じてるだけ」
「…性格悪ッ」
小声でつっこんだ。
なんだこの小悪魔は。
天使なのはこの外見だけで、中身はそのまんま悪魔を映し出したようなヤツ。
「でも私の前ではその性格なの?」
「だってお前は他人に言っても、誰も信じなさそうなんだも〜ん」
そう言って頭の後ろに手を回した。
…悔しいことにその通りだ…。



「あの!小野寺くん!!」
髪の黒い、真面目そうな女の子が走りよってくる。
見れば左手には真っ白な封筒。

「あの…これッ」

湯気が出そうなほどの真っ赤な顔。
こちらにまで緊張が伝わってくる。

冷静な顔をして、それを眺める夏生くん。
慣れてる、って感じだった。



「あ、ごめんね?僕、今は誰とも付き合う気ないんだ」
ニッコリと笑って、あっさりと断る彼。

誰…これ。
「あ、えっと、読んでくれるだけで…」
「ごめん…。僕、キミの気持ち嬉しいけど、答えられないよ」
大きな双眸にたっぷりの涙を浮かべて言う夏生くん。
ああ、もう別人だ。

「あ、そんなつもりじゃ…、ご、ごめんなさい!!」
終始真っ赤で居続けた彼女は、最後走り去る時だけは泣きそうになるのを堪えて真っ赤になっていた。

「はぁ、疲れるな」
走り去る女の子を見送りながら、こんなことを呟く夏生くん。

「おい」
「え?」
「お前だよ」
「な…何?」
「ちょっと付き合えよ」

え!?
左手を掴まれて勢いよく歩き出す彼。


ど、どいこと?


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