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雪村 聡
太陽なキミ

引っ張られて中に入ると、チハルと夏菜が待っていた。

「どうしたの、美乃里!帰ろうとしてた?」

チハルが心配そうに寄ってきた。
なんだかんだで2人とも優しいなぁ。
「いや、帰ろうとしてたわけじゃないよ。怖かったんだよね?みんなテンション高くて!」

彼が満面の笑顔で言った。
それがあまりにも眩しくて。
思わず顔を下に向けて赤面。

「まあまあ、美乃里も座りな?雪村くん飲も!」
夏菜が、私を隅に座らせて、「雪村くん」に駆け寄った。
さっきの彼の名前は「雪村」って名字なんだ…。

雪村くんの背中を目で追っていると、横からまだ若々しい男の子の声。
「やっぱ雪村先輩かっちょいいよな〜!さっそく女1人ゲットしてるし」
「え?」
横を見ると、誰よりも髪が茶色な男の子。
左耳にはピアスをして、なんだかヤンチャっぽいけど怖いな。
「あ、オレ紫崎譲(シノザキユズル)ね。あんたより1個下。今日は先輩に頼み込んで参加したんだ」
「先輩…」
「そう、先輩は高3だからね」
そう言って、紫崎くんはオレンジジュースを飲んだ。
「なんか元気があって、明るいね」
私が大声で歌ってる雪村先輩を見た。
「まぁね。生徒会長だし」
「え!?」
「とにかく人に接するのが好きなんだ、先輩。今回の合コンも先輩がセッティングしたくらいだからね」

そう言うと、紫崎くんは雪村先輩の所へと走っていった。
2人で仲良く歌ってる。
夏菜もチハルも、みんな大笑いして。
私も思わず笑ってしまった。
紫崎くんも雪村先輩も、同い年に見えたから。



「また遊ぼ!」
雪村先輩が明るく言った。
みんな最高にテンションが高くて、「おー!」って返事する。
「はいこれ。ケー番」
雪村先輩から小さな紙切れを渡される。
「え?」
顔を上げると雪村先輩がまた顔いっぱいに笑ってて。
「あ、いらないって?」
「う、ううん!」
私は必死に首を振って、その紙を両手で受け取った。
「電話してよ。いつでもいいからさ!」


なんて、明るくてステキなんだろう。
これじゃ誰でも好いてしまうに決まってるじゃない。

「げっ、美乃里まで貰ったの?」
夏菜が私の手の中をのぞきこんで、そう漏らした。
「うん、夏菜も?」
「てか全員」
どう見ても落ち込んでる夏菜。
もしかして…。


「夏菜、好きになっちゃった?」
私がうつむく夏菜を見上げるように見た。
夏菜は慌てて赤面する。
「ちょ!あんま大きな声で言わないでよ!」

「そうなんだ」



私はもう一度先輩を見た。

男子とギャーギャー騒いでる。
かわいいなぁ、先輩。


だけど、…夏菜の好きな人なんだよね。

私は下を向いて、紙切れを見た。
にょろにょろとした文字で「090…」と番号が羅列されている。

どうせかけたって、「だれ?」って言われるに決まってる。
もし覚えてたって何にも起こらないし。



私は、その紙を、ポケットの奥の奥にしまいこんだ。


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あきゅろす。
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