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雪村 聡
出会い



目をつぶって、誰にもバレないように深呼吸をした。
あと5分もすれば、合コン会場のカラオケボックスに到着してしまう。
行く前からさっそく後悔してしまった私は、緊張して破裂しそうな心臓を止める事で精一杯だった。
「大丈夫かぁ?美乃里ぃ」
夏菜が振り返って私の顔を窺う。
大丈夫!と笑って返す私。
本当はもう笑顔がひきつってる。
「まぁあとは慣れだよ。大丈夫大丈夫」
チハルが優しく笑いかけた。
その笑顔で、ほんの少し緊張が和らぐ。



本日の合コンメンバーは私を入れて、6人。クラスメイト3人をプラスして、カラオケボックスへと一緒に直行している。
チハルも夏菜も気合いを入れて化粧したようで、いつもより目鼻だちがハッキリしている。
なんだか冴えないなぁ、私って。


「ごめん!遅れた!?」
後ろから覆いかぶさるようなその声に、5人は一斉に後ろを振り向いた。
私もつられて振り向く。

「オレら遅かったかな!?」
息を切らせた男の子が立っている。
短髪で、ワックスが何かで立ててあるのかな。ツンツンの頭。
「ううん、うちらも今きたから」
チハルがさらっと返事をする。
「ねぇ、かわいくない?」
夏菜が私に耳打ちする。
走ってきたらしい彼の背後には5人の学ラン男子が立っている。私達を見つけて1人で走って追いついてきたのかな?
「おい!お前ら早く来いよ!」
ブンブンと手を振る彼に、他の男子がゾロゾロと歩き出した。
「さ、入ろうぜ!」



満面の笑み。
あどけなくて、幼げで。
でも腕まくりされて、見える腕はゴツゴツと筋肉質で。
ひょろっとしていて細いんだろうけど、しっかりとした骨格。

彼の性格は見た目に表れていた。
元気で、明るくて。
たぶんそんな彼のことだから、周りからの人望も厚いんだろう。

彼を一言で例えるならば、「太陽」だった。


カラオケボックスの入り口に入るまでに、だいたいのペアは成立していた。
もちろん私は話し掛けられることもなく、その場にたたずむばかり。
愛想がよくて、明るい彼は、チハルと夏菜が持っていっちゃった。

「おい!何してんの!」

「え?」
顔を上げると、不思議そうな顔をしているさっきの彼。


「あ・えと…」

「もうみんな中にいるよ?行こうよ!」


手を握られて引っ張られた。
少し強引な彼。
でも嫌じゃなくて。


後ろから見える大きな背中にドキドキしてみたり。

手に汗かきそう。
緊張して顔赤くないかな?
彼が好きとかそんなのは別に関係なく、彼に嫌われたくない、と感じた。



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あきゅろす。
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