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山口 千明
海に行こう!(奈々様キリリク)



梅雨も終わり、いよいよセミが激しく鳴き始めた。

夏、本番。



図書館の中は、冷房が効いていて気持ちがいい。
真っ白なブラウスに汗をかくことはないし、清々しいの一言だ。

そんな中、隣の山口くんはやっぱり真剣に勉強をしていて。




山口千明…中性的な顔立ち、中性的な名前だけど、れっきとした男だ。
メガネをかけてて真っ黒な髪で…超美形。
西高でトップの学力を誇っていて、将来医者を目指している。


そして私の…カレシ…なんだ。






「あ〜外暑そ〜」
容赦ない日差しが降り注いでいる図書館の中庭を見下ろして呟く。
海に行ったら気持ちいいだろうなぁ…。
「暑そうだな。絶対外出たくない」

本を見たまま山口くんが呟く。

…今誘おうとしたのに…軽くかわしましたね?



「海、行きたいよね〜」
「…別に?」
「いや、行きたいでしょ?私は行きたくないけど、行ってあげてもいいよ?」
「・・・・・・・」



山口くん特有の恩着せがましいコメントを私が放つ。
顔を持ち上げて私を見る山口くん―――――しばし、沈黙。

「…暑いよ?」
「暑いからだよ」
「…1人で行けよ」
「ううん」

シャツのそでを掴んで立ち上がる。
「いこ!海!」

出かけよう。2人で…さ。



燦然と輝く海。
水平線は遥か遠くでキラキラと輝いて。
潮騒があとを追って何度も何度も残響し、白い砂浜は熱を放つほど照らされていた。
まだ人気のない砂浜。
空の蒼と海の青がどこまでも続いている。

「…すごいキレイ!」
山口くんに笑いかけて走り出した。



ローファーを投げ飛ばして、ハイソックスも脱ぎ捨てる。

「ちょ、柄園…!」
彼が止めるのも、完全無視!!









「ギャァ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


5メートルも進んでないうちに、私は真っ青になって叫んだ。

か、体が沈むよッ!!


「お前のことだからそうだと思った。ここ海水浴場じゃないから、すぐ深くなるんだよ」
「た、助けて!」

「…助けてほしい?」

フフンと得意気な顔をする。
ちょっと!彼女が死にかけてんだよ!!

「た、たぶけで…」


あぁ、もう死ぬかも。
あんまり突然だったから足がうまく動かないし、思ったより水冷たいし…。

あああ…制服重い…。






突然腰を掴まれて水面に持ち上げられる。
必死で呼吸をして前髪を上げた。


「恩に着れよ」
「ハァ…ハァ…」


ああ、何か一言言ってやりたい…。
調子乗りやがって〜!!

思えば今この状態。
腰を寄せられて、私は足がつかない状態であり…あれ?
…結構身動きできないんだけど。





「今ごろ気づいた?」

ニヤリ、と笑う。


「…それが…狙いでしたか?」
「それが狙いでした」




右手で、メガネを取ってあげる。
一瞬目をつぶって、そのあと――――私を見た。



太陽の光で煌めく水面。
その乱反射した光が、私と山口くんを下から照らして。





見つめ合って、微笑む。

肩に腕を回して、引き寄せた。





驚いた顔をする彼。
…意外だった?


もっと色んな表情見せて。




潮騒が、何度も呼応する。
真っ青な海は遥か遠くまで広がって。
遠くで鳴く、カモメ…セミ。




「人工呼吸してやるよ」




後頭部をおさえられる。


今日は脳天突き上げるほどの――――――暑い日です。




*END*



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あきゅろす。
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