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山口 千明
嫉妬?(奈々様キリリク)

急に降りだした雨に、私は近くの店へ走り込んだ。
明るい店内に気をとられ、様々な物を物色する私。

キレイなアクセサリーがライトに照らされて一層光ってる。



「アレ?美乃里ちゃん?」
そこに通りかかったのが、東城くん。
珍しく1人。
そう言えばこの店の2階って古着屋だっけ。
「こういうの好きなの?」
東城くんが私の隣にきて、一緒にケースの中を覗く。
「うん、こういうチョウチョのやつとかかわいくない?」
ダイヤモンドでかたどられた蝶の姿。
華やかなネックレス。
「へえ…、じゃあこんな指輪も好き?」
「ウンウン!」
興奮して真っ赤になって頷いた。
それに東城くんもつられて笑う。
「あ、雨やんでる」
東城くんの肩越しに、雲の隙間から青空が覗いていることに気付いた。
「私、もう行くね!」
手を振って、店を出た。
雨のあとの嫌な湿気。
傘もないから、今日は図書館に行くのやめよう。
「ごめ…ん、今日は…行かないね…っと」
送信のボタンを押してケータイを閉じた。
青の点滅している横断歩道へ急いで駆け出した。


次の日、暑苦しい日差しに目をこすった。
「ああ、朝か」
パジャマを脱ぎ捨てて、制服を羽織る。
「図書館行ってきま〜す!」
勢いよく玄関を飛び出した。



「お早よう!」
いつもの、席。
山口くんの隣に座る。
ねぇ、外暑くなかった?と聞きたくなるくらい涼しい顔。
「…………………………」
「山口くん?」
無反応な彼に、私が顔をかしげて覗き込む。
その私の目線から反らすように、あっちを向いてしまった。
「…怒ってるの?」
「…………………………」
なんで?
そう聞きたいけど、無神経な言い方すぎて聞けない。
えっと…私昨日何かしたっけ?

おととい会った時は普通だった。
とても普通。
ってことは、昨日か今日?

「えっと…ごめん」
とりあえず謝る。
でも、本当に何で怒ってるの?
「…別に」
やっと口を開いた山口くんはそれだけを言った。
そしてそれ以上言うこともなくて、机に向かって教科書を取り出す。
どうして?
いつ?
何で?
私いったい何で山口くんを怒らせたの?




「うーんうーん」と悩むこと10分。
ふと視線に気付く。
頬杖をついた山口くんが、私の方をじっと見ている。
「…え?」
私が耐えられなくなって声を出した。
いったいなんですか?
「ここ」
腕が伸びてきて、私の問題集を指差す。
「ここ、答え違う」
「え!?ホント!?」
慌てて消しゴムをつかんでゴシゴシと消す…が、それでも感じる視線。
「…何?」
手を止めて山口くんを見る。

直後、不機嫌な顔をした、山口くん。
「!?」
意外な表情に、私は驚いて目を見開いた。
「ど、どうしたの!?」
「おまえなぁ」
「ん?」
首根っ子をかく彼。
それが照れ隠し。

「東城とどんな関係?」
「…東城くん?」
突然飛び出した意外な一言。
「どんな関係って…?」
「昨日、見た」
「何を?」
「…………………………」
黙り込む彼に、私は昨日の記憶を手繰り寄せた。
そういえば東城くんに昨日会った。
そして軽くアクセサリーについて話をして…。
「別に、どんな関係でもないよ」
「一緒にケース見てた」
「いや、ケースぐらい見るでしょ?」
「選んでた」
「は?」

一瞬固まる思考。
選ぶ?
いつどこで選んだっけ?

「いや、このアクセサリーかわいいねって話してただけだよ?」
「そんな感じじゃない」

いやでもそれが事実だし…。
確かにアクセサリーを見て、かわいいねって話しただけ。
ホントにそれだけ。
なのに、そんなに怒る必要ある?
「はたから見れば、恋人同士みたかった」

言われて、黙った。

アクセサリーを見て、指差して選んで、笑い合ってたら、恋人同士に見える。

「…声かけてくれればよかったのに」
そしたら誤解もすぐそこでとける。
「…………………………」
山口くんが頭をかいた。
「ああいうの、やだ」
「え?」
「ああいうの、すっごく嫌だって言ってんの!」
赤くなる彼。
え?
もしかしてこれって…。
「あ、う、うん、…そ、そうだね!うん…やめる…」
真っ赤になってそれだけ言った。
やだ、ちょっと嬉しい。

それから山口くんは、いつも通り教科書を見た。
けれど2人はいつまでもぎこちなくて。
まるで初めて今日ここで恋人同士になったみたいに、ドキドキして。

問題集をにらむ私の顔が、かすかににやけた。




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