らんま1/2で100のお題
001.許婚(良←乱)

『婚』姻を『許』す、と書いて、

『許婚』



「許さん! おれは断じて許さん」
「へぇへぇ、そうですか」

毎度の事とは言え、馬鹿の一つ覚えのように繰り返されるこのやりとりに、さしもの乱馬もうんざりしていた。

(良牙もいい加減飽きねぇもんだろか)

雨霰と降り注ぐ拳や蹴りをかわしながら、ぼんやりそんな事を考える。

しかし反面。
こうして良牙が構いに来る事が、ほんの少しだが、乱馬は嬉しくもあった。
あかねと許婚でいる限り、彼は追い掛けて来るだろうから。
ならばこの先ずっと、自分と彼の縁は切れないと言う事だろうから。

(もっとも、この先あかねが他の男になびく可能性も無くはねぇけど…)

「きさま! 何を寄所見しているっ!?」
「…っと!」

(やべ、戦闘中だった)

考え事をしていたせいだ。
完全に油断していた。
時間にしてコンマ1秒、しかし乱馬の気が逸れたその一瞬を、良牙が見逃す筈がない。
体勢を立て直す暇もなく、すぐ間近で彼の剛腕が唸りをあげる。
頬を掠める良牙の拳に、ヒヤリと冷たいものが背筋に走った。

「あぶねぇっ」

間一髪の所で何とかそれを避けると、そのまま大きく後ろに飛んで一旦良牙と距離を取る。

「逃げるか卑怯者!」
「しつけぇな、おめーは」

それでも尚、追い縋ってくる良牙を見て、乱馬はふと自分が笑っている事に気付いた。

(やっぱり楽しいのか。嬉しいのか。おれは)

認めるのは悔しいが、けれど仕方がない。
結局の所、一生離れられないんだろう。
それがどんな形であっても、良牙とは。

「何がおかしい!?」
「あん? おめーの顔見てたら嬉しくてよ」
「な…っ、ふざけるなぁっっ」
「本気だぜ、Pちゃん」
「殺す!!」


(いや、もしかしたら離したくないのは俺の方なのかも、な)








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乱馬って実は良牙が大好きなんじゃないかと。

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あきゅろす。
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