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女?男?

短い茶色の髪は柔らかく跳ねていて、瑞々しい肌は白い。
大きな緑色の瞳は長い睫毛で縁取られており、涙で潤んでいる。
羞恥に紅く染めた頬は果実のようで、ぷっくりとしたの唇はきゅっと結ばれていた。


―…誰がどう見ても、可憐な少女にしか見えない。


現にゾロはユエの豊満な乳房を見たし、ナミとロビンはユエの全裸を見たのだ。
本人がどんな態度を取ろうと、その体が女性であることは間違いない。


「ユエ?落ち着いて、あなたは正真正銘女の子よ?」
「俺、男です!」


ナミの言葉にユエが力強く言い返す。
しかしその声も高く、可愛らしい。


「お前―…自分の性別も忘れちまったんじゃねぇか?」


ユエが大きく目を見開く。
ゾロは腕を組んで、「自分の体をよく見ろ」と続けた。
ユエの視線が徐々に下がる。
シーツを持った指先が震えていた。
目の前の光景が信じられないらしい。
「何で、どうして」としきりに繰り返した。
嘘を吐いているようには見えない。
ユエは本気で自分を男だと思っているらしい。


「ユエは今混乱してるんだ。話すのは後にした方が良い」


チョッパーが言い、ユエの肩をそっと撫でた。
ユエは視線をさ迷わせながらも、小さく頷く。


「船医さんの言う通りね、もう少し落ち着いてから話しましょう」


ロビンが立ち上がり、ナミに何か耳打ちする。
それに頷いたナミは、ユエを気にしながらもドアへ向かった。


「何かあったら呼んでくれ。俺、部屋の前にいるからな」


ユエを一人にさせてあげるつもりらしい。
ナミとロビンは既に部屋を後にしていた。
それにチョッパーが続く。
ユエは何も言わずにその背中を見ていた。
ふと、ゾロと目が合う。
何か言いたそうにしていたが、結局ユエを睨んだだけだった。
狼狽えるユエに黙って背を向ける。


そして、何も言わずに出て行った。




*




「きおくそーしつ?」


ルフィが首を傾げる。
チョッパー以外全員が食堂に集まっていた。


「そう考えるのが妥当じゃないかしら。彼女、何も覚えていないんですって」
「それに自分の事男だって言い張るのよ」
「じゃあ男なんじゃねーの?」
「男!?あのナイスなプロポーションは確実にレディーだろ!?」


あっけらかんとしたルフィに、サンジが勢いよく突っ込む。
全員ユエがゾロに引き上げられるのを見ているのだ。
他の者もサンジと同じことを思っていた。


「あの子は女の子よ、それは間違いないわ」
「確かに、誤魔化しようがないものね」


ユエの裸体を見た二人が断言する。


「では、何者かに襲われたショックで自分が誰かも分からなくなってしまったということなのですか?」


そう尋ねるブルックに、ナミは首を振った。


「でも名前は覚えていたわよ?しかも男であることは力強く主張してきたわ」
「と言うかよ、そいつが何も覚えてないってんなら、そいつを襲った『何者か』が重要なんじゃねーのか?」


なかなか進まない話に、ウソップが割り入った。
確かに、ユエから情報が得られないのであればその『何者か』を突き止めるのが重要だろう。


「ゾロ、お前何か見てねーのか?」


ウソップは部屋の隅で腕を組んでいるゾロに視線を向けた。


「―…俺がアイツを見つけた時、空にも海にも、何もなかった」
「俺も見たけど、何にもなかったなぁ」


ゾロの次にユエの存在に気づいたルフィが言う。
二人とも気配に疎いわけでも、視力が悪いわけでもない。むしろ常人より良いくらいだ。
そんな二人が何もなかった、と言うからには何もなかったに違いない。


「だとしたら、その嬢ちゃんを海に捨てて速攻逃げたって事だな。ふてぇ野郎だ」
「それはねぇ」


憤慨するフランキーの言葉を即座にゾロが否定する。


「あ?何でだよ?普通に考えたらそーなんだろうがよ」
「後ろの髪が濡れてなかったんだよ。それにアイツはうつ伏せで海に浮いてたんだぞ」


頭を怪我した状態で水面に顔を浸けたまま、船が見えなくなるまでの時間を漂っていたとしたらユエはゾロが駆けつけた時に確実に息の根を止めてしまっているだろう。
それに後頭部の髪が濡れていなかったと言うことは、船の上から突き落とされたわけではないということだ。
水面に寝かせるように捨てられたとしか考えられない。



「…どう考えたって俺がアイツを見つける前に完全に逃げ去るなんて真似は出来ねぇだろ」
「じゃあ嬢ちゃんがいきなり海の上に現れたってのか?」
「あり得ねーだろそんなの!」


ウソップが否定すると、ロビンが「あら、大切な事を忘れているんじゃないかしら?」と口をはさんだ。


「ここはどんなあり得ない事だって、あり得ないとは言い切れない場所じゃない?」


ロビンの言う通り、ここグランドラインでは常識など通用しない。


「何でも良いじゃねぇか。ソイツ困ってんだろ?」


静まり返った食堂に、ルフィの声が響いた。


「だったら助ける!」




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あきゅろす。
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