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剣士の誤解

ナミさんに悪魔の実の事を教えてもらい、何となくは理解した。
とにかくその実を食べると凄いことが出来るらしい。
だから、俺には当てはまらないと言うのも分かった。
俺にはロビンさんやルフィさんのような超人的な能力はない。


「能力者じゃないとしても、何かしら武術を身に付けているんじゃないの?」


ナミさんに問われ、俺は首を傾げるしかなかった。
サンジさんの蹴りに反応したのは、武術とかそんな大層なものではない。
ただの反射だ。
殴られそうになって目を瞑るようなものだ。

俺が答えあぐねていると、ゾロさんが席を立った。


「おいクソコック、どういうことだ。お前女は蹴らねぇんじゃねーのか」

低い声でそう言って、サンジさんを睨み付ける。
一気に場の空気が不穏なものになった。
サンジさんが持っていた食器を置いて、ゾロさんを睨み返す。


「あ゛ぁ?何を勘違いしてやがるクソマリモ」
「どこが勘違いなのか言ってみろクソコック」


敵意を剥き出しにする二人に、俺はどうしたものかと狼狽えていた。
ナミさんは特に気にしていないらしく、二人を止めもせずに席を立つ。


「俺はユエちゃんを蹴ろうとしたんじゃねぇ!ルフィを蹴ろうとしたんだ!」
「じゃあなんでそこにアイツが出てきたんだよ?」
「それは―…」
「す、すみませんっ!俺が勝手に飛び出したんです」


ヒートアップしていく二人の間に入る。
心臓がバクバクした。
どうして朝からこんな修羅場になっているのか。


「あの、上手く言えないんですけどルフィさんが攻撃される気がして…」


モゴモゴしながら言うと、膨らんだお腹を撫で付けていたルフィさんが「そうだったのか!やっぱオメーすげぇな!」と笑った。
と言うか、サンジさんとゾロさんの険悪な雰囲気をなぜ皆さん無視しているのだろう。
俺は当事者と言うこともあり、気が気ではない。


「本当は本気じゃなかったんですよね?すみません‥空気読めなくて…」
「ユエちゃんは一切何にもこれっぽちも悪くないよ?大体ユエにマリモの服なんか渡したルフィが悪いんだから」


サンジさんが笑ってフォローしてくれたけど、あまりフォローにはなっていなかった。


「その…ルフィさんには皆さんの服を持ってきてもらってて…俺がゾロさんの服を選んだんです」


俺が男物の服を着たいなどと言わなければ良かった話なのだが、女物の服はどうしても嫌だった。
それにこんな騒ぎになるとは思わなかった。
申し訳なくて、俺は体を縮めた。

俯いた視界にゾロさんの足が映る。
顔を上げると、不機嫌な顔のゾロさんが俺を見下ろしていた。


「俺の服はどうでも良い。…お前、蹴られて平気だったのか?」
「へ?」
「こんなクソコックでも蹴りの威力は確かだ。怪我したんじゃねぇのか?」


そう言われて、俺は初めてゾロさんの表情の意味に気づいた。
ただ怒っているのではなく、俺の事を心配してくれていたのだ。
それを自覚すると、あまりの嬉しさに俺は思わず笑ってしまった。
ゾロさんの眉間のシワが深くなる。
困惑している顔も男らしかった。


「サンジさんには蹴られてませんよ。寸止めしてくださったので」


ニッコリ笑って言うと、ゾロさんが僅かに目を見開いた。



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あきゅろす。
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