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朝のキッチン
起きた途端、ナミさんの寝顔があって叫びそうになった。
息を止めてどうにか耐える。
起こさないようにベッドから抜け出すと、ドアに向かってダッシュした。
一緒に寝てただなんて、恥ずかしすぎる。
顔が熱くなるのを感じた。
頭の血管が切れそうだ。


「もう起きたの?早いのね」


ロビンさんの声に、俺はドアノブを握ったまま固まってしまった。
ベッドを振り返ると、上体を起こしたロビンさんが笑っていた。
物音を立てたつもりはないが、起こしてしまったらしい。


「まだ4時半よ?もう少し寝ていたら?」
「あ、いえ‥ね、眠くないのでっ」


わたわたと言い訳すると、ロビンさんは穏やかに笑って「そう」と納得してくれた。


「着替えはクローゼットにあるから、好きなものを着て構わないわ。剣士さんよりは衣装持ちだから」
「あ、ありがとうございます」


クローゼットを指差され、俺はとりあえず着替える事にした。



*


ユエは厨房に向かった。
調理している音が聞こえたからだ。
そこにはサンジがいた。
ユエに気づくなり笑顔を向けてくる。
ユエは慌てて頭を下げた。


「おはようございます」

「おはようユエちゃん、早いね。お腹が空いたのかい?」
「い、いえ、そういう訳では…ちょっと音が聞こえたので」


サンジはスープをかき混ぜる手を止めた。
材料を手際よく出しながら、包丁を構える。


「今日はナミさんの服を借りたんだな」
「はい‥俺が着るとゾロさんのシャツが伸びてしまうので」
「あんなマリモの服より断然似合ってるよ」


トントンと材料を切りながら、サンジは甘い声でユエを褒め称えた。
つっかえる事なく出てくる褒め言葉に、ユエはどう返したものかと眉をハの字にする。


「あの、俺男なんで‥そう言われるとちょっと…」


ユエが俯くと、サンジは料理の手を止めた。
Tシャツに七分丈のジーンズを履いたユエを改めて観察する。
どれだけ本人が主張しても、ユエは女の子だった。
しかもかなり可愛らしい。
そんな可愛い女の子が俯いているのを見ると、サンジは罪悪感やら庇護欲やらを感じてどう言葉をかけるべきか迷ってしまった。


「あー…、ごめんね?別に悪い意味で言ったんじゃないんだ。その、今度から出来るだけ言わないようにする」


サンジがそう言うと、ユエはパッと顔を上げた。
緑の瞳がキラキラと輝いている。


「ありがとうございますサンジさん!これからは俺を男扱いしてくださいね」
「え、いやそれは―…」


無理だ、と続けようとしたサンジだったが、ユエの期待に満ちた眼差しを見て、何も言えなくなってしまった。
それを了承と取ったらしく、ユエは笑顔でサンジに近づいてきた。


「あの、何かお手伝いさせてくれませんか?昨日のご飯のお礼をしたいんです」
「そんなお礼なんていいよ。ユエちゃんは座ってて、怪我もまだ治ってないだろ?」


「それに、大体の仕込みは夜のうちにやっておいたし」と続けると、ユエは「じゃあお昼ご飯を手伝います!」と満面の笑みで返してきた。


「ユエちゃんは料理をしたことあるの?」
「えっと、覚えてないんですけど‥何かやれそうな気もします」
「へぇ、じゃあお昼に一品お願いしようかな」


ユエの記憶がないならば、体に残った記憶から引き出す手が有効かもしれない。
サンジはそう考え、昼食をユエに任せることにした。

サンジの言葉にユエは嬉しそうに頬を赤らめる。
色白だから、赤くなると頬がまるで桃のようだ。
「頑張ります」と笑うユエに、サンジは胸がキュンとした。
柔らかな茶髪に手を伸ばし、よしよしと撫でる。
ユエがキョトンとサンジを見上げる。


「ごめん、何かユエちゃん見てると撫でたくなる」
「え?そうなんですか?」
「そう、‥撫でられるのは嫌だったりする?」
「いえ、気持ち良いです」


ユエがふにゃりと笑う。
そんなユエの可愛さに胸を射抜かれたサンジは、しばらくユエの頭を撫で続けた。






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あきゅろす。
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