[携帯モード] [URL送信]
おやすみ

あれから結局、ナミさんは俺に謝ってくれた。
何だか俺を見ていると世話を焼きたくなるらしい。
悪気はないし、俺のためを思ってくれていたのだから謝られると申し訳ない気がした。
オロオロしているとゾロさんから「しゃんとしろ」と言われた。
カッコ良い…。俺も男としてこうありたい。
と、ゾロさんを見つめていると視線を思いきり逸らされた。
ちょっと気持ち悪がられたのかもしれない。
…今度から見つめすぎないよう、気をつけよう。






お湯で濡らしたタオルで体を拭く。
背中はチョッパー君に拭いてもらった。


「痒いとことかないか?」
「んーちょっと上の方痒いかも」


もっとゴシゴシ擦ってくれて構わないのだが、チョッパー君は優しく俺の背中を拭いた。
何だか物足りない。


「もっと強くして?」
「え、でも赤くなってるぞ」


ユエは皮膚薄そうだし、あんまり擦っちゃダメだ、と断られてしまった。

視線を下ろすと、完璧に女の体があった。
いまだに信じられない。
何だか自分の体じゃないみたいで、あまり直視出来なかった。


「チョッパー君、俺ってやっぱり変だよね…」
「変って?」
「だって、体は女の子なのに心は男なんてさ」
「うーん、よく分かんないけど体は男で心は乙女とか言うヤツもいるんだし、別に良いんじゃないか?」


チョッパー君が何でもないように言ってくれるおかげで、少し気分が軽くなった。


「そうかな」
「そうだよ!それに…ユエは俺を変だとは思わないのか?」
「チョッパー君を?何で?」


後ろにいるチョッパー君を振り返ると、気にしてないなら良いんだ!と誤魔化されてしまった。
チョッパー君は別に変じゃない。
俺を元気づけてくれる優しい人だ。


「よし、終わったぞ」
「ありがとう、チョッパー君」


一通り拭き終わるとナミさんに借りた服に着替えた。
ズボンだし、女物だけど我慢してくれと言われた。
本当は少し嫌だったけれど、下着は強要されなかったし、ゾロさんの服が伸びてしまうと言われたので言う通りにした。
ゾロさんは別に伸びても良いって言ってくれたけど、それは申し訳なさ過ぎる。





着替え終わり脱衣所から出ると、ナミさんとロビンさんが立っていた。


「あら、やっぱりサイズの合ってる服の方が似合ってるわね」


ナミさんが言って、ロビンさんが頷く。
今度は一体何を言われるのだろうと身構えていると、ロビンさんがクスリと笑った。


「そんなに身構えないで、寝室のことを話そうと思っただけだから」
「寝室?」
「そう、こればっかりはあなたを男扱い出来ないの」


ナミさんがそう続けたが、いつ男扱いなんてしてもらえたっけ?と思ってしまった。


「え、俺別にどこでも寝れますけど…」
「じゃあ私達の部屋で問題ないわね」
「え?」


行きましょ、と手を掴まれる。
ロビンさんは相変わらず笑っていた。

そのままついて行くと、可愛らしい部屋に連れてこられた。
何か、甘い匂いがするような気がする。


「まさか…ここで一緒に寝ろとか…」
「そうよ?」
「だっダメです!」


俺が拒否すると「こんなに嫌がられると確かにショックね」とロビンさんが穏やかに言った。
ショックとか受けているようには全然見えない。
嫌がってばかりで申し訳ないとは思う。
でも、俺は男だって事を理解して欲しい。


「別に捕って食う訳じゃないんだから安心しなさいよ」
「いやいやいや!そうじゃなくてっ!」


ナミさんもロビンさんも美人で、スタイルも良くて、魅力的な女性だ。
そんな人達に囲まれて…その、平然と寝ることなんて出来ない。


「お、俺、眠れないです」
「どこでも寝れるって言ったじゃない」
「寝てる間に、そのっ…お、襲うかもしれませんよっ!」
「あら、それなら心配しないで」


ロビンさんが俺の頭を優しく撫でる。
俺がロビンさんを見上げると、ニッコリとした笑みを向けられた。


「アナタには絶対負けないもの」


―…どこから来るんですかその自信は…!
と思ったが、言い様のない恐ろしさを感じて、口にすることは出来なかった。



渋々、ベッドの中に入る。
やっぱり良い匂いがして、落ち着かなかった。
そわそわしてしまう。


「おやすみーユエ」


布団をぎゅっと握りしめていると、ナミさんに頭を撫でられた。
顔が熱くなる。恥ずかしい。


「お、おやすみなさい…」


頭まで潜り込んで小さな声で返す。
ナミさんとロビンさんが笑う声がした。




結局、ベッドの寝心地が良すぎて一番最初に寝てしまったのだった。




[*前へ][次へ#]

10/59ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!