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蒲公英

[side春]


正直、受け入れたくなんてなかった。もう三十路になるってのに、彼女もいなければ女の影すらない。そんな俺が、蓮を好きだなんて。


「…有り得ねぇだろ」


まず世間で許されない。男同士で同じ職場で、それもデスクが隣同士。明らかに浮いてる。

でもこの感情は俺だけかもしれない。蓮は本当になんとも思ってなくて、俺のことを友達としか見てなかったら?そしたら俺はどうすればいい。

…リスクが高すぎる。もし失恋したら今まで通りの付き合いなんて出来ない。絶対気まずい。そんな空気に俺は耐えられるのか?


無理だ。


でも、このモヤモヤした胸の内をどうにかしたい。いっそのこと、辞める覚悟で告白するか?そこまでする理由はどこにある?

ただ、好きだという感情一つで動いていいのか?

俺ももういい年だし、そんな甘酸っぱい青春みたいなことできない。

それは、本当に?そう思いこんでるだけじゃないのか?









まだ三十路にはなってない。まだハチャメチャしても許されるよな?

一回だけ甘酸っぱい青春感じても、罰は当たらないよな?









…心が決まった時には既に、俺の足は動き出していた。




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