蒲公英
2
いやいや、なんだこれは。冗談だと言ってくれ頼むから。
「…ん」
どこをどうみても全裸。そして俺は、この目の前の全裸の男に抱きしめられている。俺とは違う明るめの茶髪。
春だった。
昨夜、何があった。いやそれはなんとなく分かる。腰がズキズキするし頭が痛いし喉が痛い。あぁ確か飲んだんだった。もしかして俺は一線を越えてしまったのか。
「はる」
ガラガラ声で春の肩を揺らす。そうすると春は小さく呻いて、固まった。
「…え」
えって言いたいのは俺の方だ。もしかして俺が誘ったのか?
「れ、蓮」
「…なんだよ」
「ごめん!!」
布団を捲りあげて土下座をされた。いやいや、そういうことじゃないし。違う、と言いたくても腰が痛くてうまく起き上がれなかった。
「謝るなよ」
「俺、多分酔ってて」
「俺も多分酔ってた」
「全然記憶ないんだけど、蓮とヤっちゃったってのは分かった」
「俺も…身をもって」
胡座をかいた春を見上げると、すまなさそうに頭を撫でられた。なんだかこっちが悪いような気がする。いや、お互い酔ってたんだからどっちが悪いとかはないはずだ。
「俺は、平気だから。気にすんな」
そう言うと何故か傷付いた顔をされた。なんだこいつ。
「お前、腰痛いよな」
「まぁ…かなり」
「今日一日介抱してやるよ。てか、するべきだと思うし」
「…あ、そう」
春が持ってきた俺の下着を見て、何故か恥ずかしくなって顔を背けた。今更、こんなの恥ずかしくないはずなのに。
「飯、作ってやるよ」
「さんきゅー」
まさか体の繋がりがあったとは思えないほど普通に、その日は過ぎていった。
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