京七小説 6 七緒は春水を嫌いになろうとしました。 肩くらいだった髪も腰まで伸ばし、いつも無精ひげです。 着物の着付けもだらしないし。 書類仕事が嫌いで、ほとんどが七緒にまかせっきりだし。 やれば何でもできる人なのに気が向かないとサボってばかりだし。 お小言めいたことを言っても、へらへら笑って受け流されてしまうし。 もっと誠実で優しい人を好きになろう。 七緒はほかの誰かを探そうとしましたが この試みはうまくいきませんでした。 気がつくと春水の姿を探し、 大勢の中からその声を聞き分けています。 苦しい。でも恋しい。 春水は、呑気なもので事あるごとに口説いては、 鉢を引っ張ってきます。 「七緒ちゃん。最近つれないなあ」 「僕に惚れてもいいんだよ」 本気じゃないくせに。 そう思いつつも、たわいなくたわむれるのは楽しくて、 こんな日が続いてほしいと七緒は願うのでした。 [*前へ][次へ#] [戻る] |