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京七小説

京楽はうつむいたままの七緒の顔を覗き込んだ。
しゃくりあげながら、とぎれとぎれに七緒は話し始めた。

「隊長と私、たくさんお話ししましたよね。リサさんのこととか本のこととか」
「うん」
「それから一緒にお散歩したりお昼寝したり」
「うん、そうだね」

一生懸命な七緒の言葉に、京楽は優しく同意した。

「だから」

七緒は涙ながらに、京楽の顔を見上げた。

「だから。隊長と私。特別なことが何にもなくは無かったですよね」

急激にこみ上げてきた感情に圧倒され、京楽は言葉がでなかった。
こんなときどうすれば今の気持ちが伝わるのか、わからなかった。
ただ七緒の前に崩れるように膝まづくと、その小さな体を本ごと抱き抱えた。

「ああ、そうだね。七緒ちゃん」

大人の女なら、簡単なことだ。
このまま抱きしめて押し倒して……。
だけど、今そうしてしまえば永久にこの少女を失うことになるだろう。
無防備で愛らしくて大切なこの子を。
なんてもどかしい。
京楽はなけなしの理性をかき集めて、こみ上げる衝動をおさえた。

「ごめんよ。僕の言い方が悪かったね。そうだな……」

良い言葉はなかなか思いつかなかった。
最近の相手が、すれた玄人ばっかりだったからなあ。
悪い大人は、ただ嘆息し、七緒のかすかに震える背中をなでるばかりだった。

このとき京楽に刺さった恋の矢は、100年たった抜けないまま今に至っている。
自隊の女性に手を出さないという方針は変えざるを得なかったが
なに、特別な、たった一人のことだ。許されてしかるべきだろう。
「ねえ。僕の七緒ちゅわーん」
「誰が”僕の”ですかっ」


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あきゅろす。
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