京七小説
1
昔々あるところに七緒という女の子がおりました。
物心ついた時にはすでに父もなく、母も病気がちでしたが、
七緒は元気に何不自由ない暮らしを送っておりました。
この家には一つの鉢が伝えられておりました。
ずっと昔のご先祖が神様のお告げを受けたとかで、
この鉢をかぶると幸せになれるというのです。
七緒が10のとき、とうとう母の病状が悪化しました。
母は臨終の床に七緒を呼び寄せ、その頭に鉢をかぶせました。そして
帰らぬ人となりました。
弔いの儀式も終わり、七緒は鉢をとろうして、大変なことに気がつきました
いつのまにか鉢は頭にぴったりくっついて離れなくなっていたのです。
全く重くもないし、七緒のほうからは普通に外も見えていたので、
不自由はありませんが七緒はあわてました。
力任せに引っ張ってみましたが、痛いばかりで、どうしても取れません。
親代わりとなった伯父は気味悪がり、七緒を都の京楽家に送りました。
京楽家は「図書頭」をつとめる上流貴族です。。
国中の書物が集まるという家柄で、お役目上さまざまな情報なども集まるので
それを生かして調査や研究なども行っています。
広大な敷地の中にはいくつも書物蔵があり、
国中の薬草や流行り病。農業の技術。地方の文化風俗などの書物が
おさめられているのでした。
そこに行けば鉢をとる良い方法を教えてもらえるかもしれない。
七緒は伯父に連れられて、すがるような思いで都に行ったのでした。
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