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京七小説

宮廷行事と言うのはどうしてこう退屈なのだろう。
とくに、貴族婦人オペラ会ときたらもう。
調子っぱずれのまま、続いていく歌声に、七緒は眉をしかめないよう苦労していた。
名曲「花の歌」は、もはや原形をとどめていない。
歌う本人たちが気が付いていないのが救いでもあるのだが。

女王であるリサに歌をささげたいというのが表向きの理由であるが、
多くの観客の前で歌いたいというのが本音であろう。
一般の謁見には常に100人を超す人々が集まる。
その真ん中で、流行のドレスを身にまとい宝石をみせびらかし
一同の注目を集めるのは、彼女たちにとって気分のいいことらしい。

回を追うごとに、衣装は豪奢になり、人数も増えていくのだが
歌だけは不思議と下手なままだ。

サロンでの音楽会であれば、ちょっとした用事を思い出して席を外すことができるが
一般の謁見となると、それはできない。
筆頭女官である七緒はつねに女王のおそばに控えていなくてはならないからだ。
かくして、七緒は女王の傍らで(つまり居並ぶ廷臣、貴族たちに相対する形で)
強制的にうんざりする歌を聞くはめになっていた。


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あきゅろす。
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