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京七小説
19
手に手に提灯を掲げた男たちが走り寄ってきる。二人はたちまち10人近い男たちに取り囲まれた。

烈は七緒をかばうように立ち上がった。
「何ようですか」
「なあに、ちょっとその子を返してもらおうと思ってさ」
「なあ、七緒ちゃん。黒土の親分さんからの贈り物を受け取っておいて、さよならなんて恩知らずってもんだぜ」
七緒は唇をかんだ。この男たちの声には聞き覚えがある。黒土について何度か店に来たことがある用心棒だ。先ほど見送ってくれた女将の悔しげな表情を、七緒は今更のように思い出した。
烈がぴしりといった。
「この子の借金はすべて返しました。この子は自由のみです」
男たちはげびた笑いを浮かべて近づいた。
「ねえちゃんには関係ねえよ。」
「それともあんたも一緒に来るかい。ちょっと年増だがまだまだ稼げるぜ。うひゃひゃひゃ」

烈さんにこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。七緒は荷物の中から長刀を取り出し構えた。
「列さん。逃げて下さい」
ところが、烈は七緒の肩に手をおいて制した。
「大丈夫。少し下がって、じっとしておいでなさい」

突然、囲みの後ろのほうから、悲鳴が上がった。
「なんだなんだ」
後ろの林から飛び出してきた何者かが、うろたえた追手を次々となぎ倒していく。
最後の一人がどさっと倒れた。呻きながら転がっている男たちを七緒があっけにとられて見守っていると。提灯の明かりのほうに二つの長身の影がゆっくり近づいてきた。
烈が声をかける。
「まあ、お二人だけですの?」
「ああ、手違いがあったらしくて」
「なら加勢いたしましたのに」
「烈ちゃんの手を煩わせるほどじゃないさ」
懐かしい声が聞こえた
「久しぶりだねえ。七緒ちゃん。元気だった?」
三ヶ月間思い続けた笑顔がそこにあった。



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