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京七小説

京楽さんはとても物知りです。
色々な物語や羅馬やら唐土やら天竺やらという、想像もつかないような遠い異国のことまで知っています。

とくに、七緒の心をとらえたのは、海の底にあるという都の話でした。
そこに立つ家々の屋根は皆くねくねしていて、魚のうろこの様な不思議な瓦で吹かれているとか。
都の中心にはお城があって、サンゴや真珠で飾られた美しい塔がいくつもたっているとか。
通りにはたくさんの人や車が行き来し、祭りの日にはタイやヒラメが舞い踊るとか。
嘘だ嘘だと思いつつも、京楽さんの話が面白くて仕方ありません。

「まるで見てきたみたいですね」
「実はそこに住んでいるんだ」
「またそんな嘘を」
「嘘じゃないさ。ほら、この刀飾りをみて。極楽鳥花だよ。どこかで見たことない」
「竜神様の紋章と同じですけど……」
「でしょ、信じてくれた?」
「それ、神殿のお土産物屋で買ったんじゃないですか」
「うわ。つれないなあ。七緒ちゃん」
「常識的な判断だとおもいます」

「じゃあ今度連れて行ってあげるよ。そうしたら信じてくれるでしょ」
「ええ。いつか、そのうちに」
「つれない返事だねえ」

京楽さんはちょっと拗ねたように笑います。
時間はたっぷりあるんだから、気長に待てばいいとでも言いたげに。


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