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京七小説

神官長に促されて、七緒は小さい箱の載った台の前に座りました。
箱の名は「鈴鳴箱」。竜神様を祭るこの神社の宝の一つです。
七緒が三つの時に、浜辺からこれを拾い上げ、それゆえにこの神殿に引き取られたといわれています。
ですが、その時のことは何も覚えてはいません。
一緒に歩いていたという両親の顔すらも。

「では、箱をとって、耳を押しあてなさい」
七緒は、神官長に言われたとおりにしました。
箱を揺らすと、シャランと鈴を鳴らしたような音がしました。
 その音は確かに箱の中から聞こえるはずなのに、遠い遠いところから響いてくるようでした。
その音はいつまでも消えず、やがて緩やかに、荘厳で深い深い音に変わって行きました。
その音がうねりながら自分に襲いかかってくるような気がして、七緒はそそくさと箱を戻しました。

「では、誓詞をよみあげなさい」
七緒は、神官長に言われたとおりにしました。
10になったばかりの七緒には難しくて、自分が読み上げた言葉がなんなのかわかりません。
呪文のような言葉を振り仮名を頼りに読み上げていくだけです。
しかし、周りの大人たちの様子から、これがただならぬ内容であることは分かりました。
読み終えると、神官長は重々しく宣言しました。
「では、これを持って、この七緒を鈴鳴姫と定める」


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あきゅろす。
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