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京七小説

魔法は12時になると解けてしまうのに、それを忘れるところだった、と七緒は思いました。
そういえば、さっきから魔法がぐんぐん解けているような気がします。
京楽さんは、あのとおりずいぶん女たらしのようですし
大奥さまや執事からのうらみがましい視線もなんだか気になりだしました。
それに、さっきから足がひどく傷みます。
慣れない靴を履いたほうは、かかとがひどい靴ずれだし、
もう片方は裸足で冷たい床をつま先立ちをし続けたため、こちらもジンジン痛みます。
七緒はそっと立ち上がると、誰にも気づかれないように会場を後にしました。

暗い夜道を一人であるいていると、後から後から涙があふれてきました。
いろんな思いが浮かんでは消えていきます。

さっきまで七緒を幸せにしてくれたものが
今は七緒の心を絞めつけます。

ずっと一緒に育ってきた従姉が恋を実らせたことが嬉しい反面、
自分の手の届かないところへ行ってしまうさみしさもあります。
七緒にとっては大事件の口付けも、
京楽にとってはちょっとした挨拶のつもりかもしれません。

そういえば、シンデレラの魔法使いって最後どうなったのかしら。
どうしても思い出せません。

まあいいわ。七緒は思いました。
おとぎ話はもう終わり。私は現実に戻らなくては。
とりあえず靴をさがそう。
ところが、道を何度も行ったり来たりしましたが靴はなかなか見つかりません。
つい数時間前に、靴なんかどうでもいいと叫んだせいでしょうか。
月夜とはいえあたりは暗く、遠くのほうで犬の遠吠えも聞こえます。
心細くなってきたところに助けがやってきました。
「おおい。七緒ちゃーん」
ランプをかざしながらやってきたのは京楽でした。


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あきゅろす。
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