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京七小説

人込みを避けて、テラスで二人きりになったとき、七緒は京楽に言いました。
「ありがとうございました。こんなにうまくいくなんて。あなたはまるで、魔法使いみたい」
「僕が?まさか」
京楽は言いました。
「魔法使いは君だよ。ショール一振りで馬車をつかまえ、シンデレラを王子様のもとに送り届けたんだから」
「そんなことありません。あなたのおかげです」
「それなら、お礼を期待してもいいのかな」
「お礼?」
二人は見つめ合いました。
そのとき七緒は初めて京楽との距離の近さに気がつきました。
当たり前のように腕を組んで寄り添っていたことにも。なんて危険なこと。
乙女の本能で、七緒は急いで、離れようとしましたが、実はもう遅かったのです。
とっくに口説きモードに入っていた京楽は、さりげなく七緒を引き寄せると、そっと唇を重ねました。

ああ、やっぱり魔法がかかっているのだ。
会ったばかりの男の人にこんな気持ちになるなんて。
あまつさえ唇を許してしまうなんて。

12時の鐘が鳴り響き、白哉と緋真の婚約は正式に発表されました。
親友の恋の成就と、初めての舞踏会、そして初めての口づけ。
いろんなことが立て続けに起きて、七緒は幸せで目眩がしています。
夢の中にいるかのようで、足もともなんだがおぼつきません。

「なにか飲み物でもとってこよう」
七緒を近くの椅子までエスコートすると、京楽はフルーツポンチのテーブルに向かいました。
ところが、一人になった途端、たちまち京楽はご婦人たちに取り囲まれてしまいました。
「あの方、どなた?」
「緋真って方とはどういうお知り合いですの?」
「私、白哉様を狙っておりましたのに、どうしてくれますの」
「それより、お待ちしてましたのに」
ある女は怒り、ある女は嘆き、ある女はしなだれかかって媚を売っています。
もみくちゃにされながら嬉しげな京楽を見て、七緒はすうっと自分の気持ちが冷めていくのを感じました。

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あきゅろす。
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