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京七小説
2 料亭にて
浮竹と一緒に花街で飲む、という京楽の希望は意外に早くかなえられることとなった。
一時期山本道場に通っていたこともある大前田という男が、突然浮竹を招いたのである。使いが来た時、居合わせた京楽もちゃっかり相伴することになった。
だが、花道へ行く道道この誘いを浮竹はいぶかしんだ。
「道場開きの祝い、ということで断る理由はないんだが、それほど仲がいいわけでもなかった男が、急にどうして。わからん」
たしかに京楽も気にしていた。大前田は実家が金持ちな割にはケチで有名で、友達の祝いをするような男ではないのだ。何が裏があるのではないか。
「まあまあ、気にしなさんな。ただ酒に理由はいらん」
京楽は心を浮き立たせるようにいった。
「ところで、浮竹、道場にいた四楓院夜一って覚えてるか」
「ああ、強いやつだった。いまはたしか刑軍にいるんだよね」
「そうそう。今から行くのは彼女の実家だよ」
「ほう。じゃあ、久しぶりに会えるかもしれんな」
「いや、むりだろう。本人が家に寄りつかないので婿養子が切り盛りしているらしい」

料亭「四楓院」は花街の中でも最も高級な店の一つである。通によれば、貴族の催す宴会に招待された様な気分にさせてくれるところがいいらしい。もともと貴族の京楽にとっては、なんだか堅苦しい場所を思い出して嫌な気分になるが

大前田はすでに上座に着き、花魁たちを呼び寄せて悦に入っていた。
わざわざ呼び出した割には、道場開きの祝いを言うでもないし、招きの礼を言った浮竹の言葉にも、うなづいただけだった。
「さあさ、お客がそろったところで、盛り上がってまいりまショー」
派手な緑の縦じま帽子に緑の作務衣というふざけたなりの太鼓持ちが、妙にテンション高く宣言した。会話が途切れがちな座を、太鼓持ちと花魁が懸命に守り立てるという、なんとも気づまりな宴会が始まった。
普段なら座を盛り上げることが好きな京楽も、何か裏があるのでは、そう思うと素直に酔えなかった。



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あきゅろす。
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