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京七小説
懐剣 2
「私にもっとわがままを言えっておっしゃったじゃないですか。あれはいつもの戯言ですか。これだけお願いしても刀一振りお持ちいただけないのですか」
「いや、それとこれとは」

七緒は、ささやくように繰り返す

「お持ちください。全身全霊をかけてお守りします。どうか」

京楽は、ゆっくりと天を仰いだ。

「まいったね、どうも」

懐から京楽の手が力なく落ちる。
七緒はかすかに息をついてほほ笑んだ。
そして、京楽から少し離れて、一礼した。

「ご武運をお祈りします。必ず無事にお戻りください」

次の瞬間、七緒は京楽に抱きとめられていた。

「ああ、必ず」

低く甘い声が囁く。

「必ず戻ってくるよ」


執務室の外にあわただしく行き交う気配がしはじめた。
もうすぐ誰かがこの部屋に駆け込んでくるだろう。
隊の編成の変更、人事異動、そして新たな敵の侵攻への備え
押し寄せるであろう仕事が次から次へと頭に浮かんだが、七緒はあえてそれらを頭の隅に追いやった。

今だけ。このひと時だけ。

七緒は八番隊で過ごした日々を思った。
そして自分にとって八番隊そのものであった男の腕の中で静かに名残を惜しんだ。

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あきゅろす。
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