京七小説
懐剣 1
七緒ちゃんの刀ねつ造設定です。
懐剣型で防御は最強。
誰かに渡すとその人の身代りになります。
ブリーチ520執務室で
「勘弁してほしいよね。総隊長だなんて、柄じゃないよ」
京楽は七緒のほうに向きなおると辞令をヒラヒラ振って見せた。
「そんなことおっしゃってる場合じゃありませんよ。今まで以上に厳しい戦いになるでしょうから」
「ん。そうだね」
七緒は上司のもとに歩み寄った。
八番隊執務室の窓を背にたつその姿を、もう見ることはない。
そして隊が離れてしまえば、こうして二人で話すことも難しくなるだろう。
とうとうこの日が来てしまったのだ。
そして、ずっと考えていたことを実行に移すのは今しかない。
七緒は懐に入れた刀をとりだすと、静かに解号を唱えた。
刀はすっと形を変え、京楽の胸元に吸い込まれた。
「ななおちゃん。どうしたの。あれっ」
いきなり自分の懐に刀が有るのに戸惑った様子の京楽に七緒は告げた。
「わたしの斬魄刀です。お持ちください」
「よしなさい」
京楽は必死で引き剥がそうとしているが刀はびくともしないようだ。無造作に脇差を引き抜きこじ開けようとしたが、刀は弾き飛ばされる。
七緒はそれを拾うと、京楽に差しだした。
「そう簡単にはとれないはずです。私に致命傷を負わせればべつですが」
京楽は苦い顔で脇差を受け取りさやに戻す。
「ねえ、七緒ちゃん。もし、この刀で防ぎきれないような攻撃を受けたら、七緒ちゃんどうなるの」
「恐らく死ぬことになろうかと」
「そんなものもらって僕がうれしいとでも思うかい」
「差し上げてなんかいません。お貸ししただけです」
京楽は低くため息をついた。
「七緒ちゃんの気持ちは嬉しい。でも、七緒ちゃんを身代わりにするなんて願い下げだよ。はずしてくれ」
「嫌です」
七緒は刀を着物の上から押えた。
「どうか、お持ちください」
「断る。今回は片目で済んだが、次の戦いではきっとこれでは済まない。命に関わるような怪我でもしたら……」
「だからです」
叱りつけるような京楽の言葉を遮り、七緒はきっとその顔を見上げた。そして叫ぶように言葉を継いだ。
「隊長がお怪我をなさるのを見るくらいなら、死んだほうがましです」
京楽は、しばし呆然と七緒を見下ろした。
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