少女とみちしるべ
幼少リサとレオの過去話。
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暮れゆく空、見知らぬ景色。
紅から徐々に漆黒へとかわりゆく空の色はまるで世界の終わりのよう。開けた大地に一面広がる花畑。そこに咲く真白な花を夕陽が赤く染め上げる。それはまるで血のよう。呪われた、このわたしとおんなじあか―
言い様のない恐怖と不安が幼い少女の心を一気に食いつぶす。
こわい、こわい
いやだ、いやだ
ここから早く離れたい。
そう思うものの足がすくんで動けない。逆に力が抜け、ぺたりと地面に座り込んでしまう。
動けない。
低い視線から見上げる世界はひろくて大きすぎて、ちっぽけな自分など容易く呑み込んでしまいそうだ。
虚空を見上げめる双眼から雫がこぼれる。ぼろぼろと落ちる涙を止めるすべはなくて、嗚咽まじりに少女は助けを求めた。
「っ……!――レオ……。レオっ!」
はやくみつけてほしかった。
ただただ少女は名前をさけぶ。
「見つけた。」
声。待ちわびた声に少女は振り向き顔を上げる。
「こんなとこに居たのか。勝手にいなくなっちゃダメだって言ったのに。」
「レオおぉぉ……」
その声に、姿に、安心して。少女は彼に飛び込む。
泣きながら震える肩を優しく包み込んで、頭をなでてくれた。
「はいはい。もう大丈夫だよ。」
黄金色の瞳を細めてレオは笑う。それに応えるように少女もわらった。
「さ、帰ろうか。リサ。」
そう言うと、被っていた帽子を少女の頭へと乗せる。
「ぼーし?」
不思議な目を向けると、瞳と同じ黄金の髪をゆらしてレオは再び微笑む。
「そ。女の子は泣き顔あんまり見せちゃダメよ。大事なときにとっておかなきゃ。」
悪戯に目を細めると、手を引いて歩き出す。
握られた手のひらからあたたかいぬくもりが伝わる。
あんなに怖かった景色が、一変して今はきれいだと思える。あなたといる、それだけで夕闇の訪れは星たちがきらめく世界との出会いにかわる。世界はわたしをあたたかく包んでくれている。
どんな暗闇にいたってあなたはわたしを見つけてくれる。照らしてくれる。
あなたは太陽。
わたしの世界を照らす光。
いつまでも変わらないように、二度とはぐれないように。
少女はその大きな掌を、強く握りかえした。
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