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金色の王と時の歯車※


どうして、こんなことになったのだろうか。


荒れ果てた大地を前にして、男は呆然と立ち尽くす。

『神の災厄』

後にこう呼ばれる二度にわたる大災害は、多くの生命を奪い、また世界を破滅へと向かわせんとした。

そして今日。その二度目の大破壊が起こった。
おそらく、『彼』が神への報復を行ったのだろう。

男もまた、多くを失った。彼の築いた軌跡、愛するもの。今此処に残ったものは彼という『存在』だけだった。


―どうしてこうなってしまったのだろう。


男は項垂れる。
はじまりは、なんだったのだろうか。
思い返しても一向に答えは出ず、思考回路は堂々巡りを繰り返すばかり。

ただひとつ、彼の頭にあったのは『彼を止めなければならない』ということだった。

神への憎しみを糧にして、それだけを存在理由に生きる道を選んでしまった親友を、止めなければ。

今ならまだ間に合う。
手遅れになる前に、彼を、救わなければ。


男は立ち上がる。金色の髪をゆらし、同色の瞳を決意に染めて。

「メル。いるんだろう?決めたよ。俺は君と契約する」

―本当に、いいの?それは、貴方の人生を対価にすることを意味するのよ。

男の声に応えるように、どこからか声が聞こえる。それは、凛として澄んだ、天使のものだった。

「ああ、いいよ。わかってる」

男はその瞳を細めて、微かにわらう。

―わかったわ。

その瞬間、辺り一面を光が照らす。やわらかな光は男を包み込むように耀くと、やがて収束し、消えていった。

…ありがとう。

天使が微笑む。その笑みはどこか寂しく、そして優しいものだった。



こうして、ひとつの歯車が止まり、また別の歯車が動き出す。

これは彼の孤独な戦い。

廻りはじめた歯車は、物語を紡いでゆくーー



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