はじまりの来訪7
「話してる場合じゃなかったね。……しぶといな」
敵の姿を見据えると、銃を取り出し構えるディーナ。
先ほどの銃撃で倒せたと思っていたが、猛獣はまだ生きていたようだ。緊迫した空気にベルトは息をのむ。
――銃弾は頭部を貫通したはずなのに……おかしい。
猛獣の後頭部にむけてディーナが放った弾は、その狙い通りの場所を打ち抜いたはずだった。彼女にもその感触はあったし、頭部に残る生々しい傷がその事実を物語っている。通常であれば頭部をやられた生命は絶命する。
だが、目の前の敵はまだ生きている。急所を外れたのだろうか。
しばらく考えていたが、それだけでは状況は好転しない。敵が動き出す前に先手を打とうと、ディーナは銃撃を放った。
それを皮切りに、猛獣は動き出す。脚をばねのようにしならせ跳躍、軽々と銃弾を回避すると、ディーナへ向けて飛び掛かる。
――速い!
瀕死のはずの猛獣は予想以上に素早く、先ほどのダメージを全く感じさせない。あっという間にディーナへと詰め寄ると、大きく腕を振い鋭利な爪での一閃を彼女へと叩き込む。
「くっ!」
咄嗟に銃を盾にして身を守るも、衝撃に耐えきれずに吹き飛ばされるディーナ。
空中で態勢を整えなんとか着地するも、間髪いれずに追撃が彼女を襲う。
「デ、ディーナさん!」
何とか猛撃を防いでいるものの、防戦一方だ。このままでは負けてしまう。分かってはいるが、ベルトは何もできずただ見ていることしかできない。
「どうしよう……。このままじゃ……」
見ていることしか出来ない自分が情けない。
握りしめた拳に爪をたてる。
大きな体躯に似つかない素早さで襲いくる猛獣。
何とか攻撃を防いではいるが、そろそろ限界だ。反撃の隙さえ与えない猛撃にディーナの体力はどんどん奪われていく。
「っ!」
攻撃の衝撃に耐えきれず、ディーナの手から拳銃が払い飛ばされる。
――しまった!
これを好機と言わんばかりに、猛獣は大きく腕を振りかざし、ディーナの身体を引き裂かんとなぎ払う。
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