国境の町2
「まあまあ。この任務は単独だと難しいし、仕方ないよ。移動の面倒さは嫌だけどね」
触れるだけで怪我をしそうなとげとげしさを放つディルをなだめ、ディーナは改めて任務の内容を確認する。
「んと、駅に着いたら今度は列車に乗り替えてグレンツェに移動。だよね。それから入国手順を聞いて……ねぇ、リイラ。この情報屋さんって一体どんな人なのかな?」
「情報屋、というくらいですから、情報を売る商売をしている方ですよ。金額に応じて様々な情報を売ってくれます。ディーナはお会いしたことないのですか?」
「ないなぁ。リイラはあるの?」
「はい。任務で何度か。でも、今日お会いする方は初めてかもしれません」
「それって?」
「情報屋は一人ではないんです。複数人の組織的なもので、一所に留まりません。どこでどなたに会うのかもまったく分からないんです」
「そうなんだ」
会話の最中、馬車が揺れて失速していく。目的地に着いたようだ。
「さて、ここからは列車です」
騎手に賃金を払うと、駅のホームへと向かう。
丁度汽笛と黒煙をあげながら、黒く磨かれた真新しい列車が進入してきたところであった。
数時間ほど列車の旅を経て、三人はようやくグレンツェへと到着する。終点のためか降りる人は少なく、駅の中は閑散としていた。
「ずいぶんと人気が少ないんだな」
「国境の町ですから、国交が盛んだったころにはにぎわいがあったのでしょうけど。今はそれも途絶えてますし、仕方ないんでしょうね」
駅をでて、町の中へと入る。こちらはある程度はにぎわっており、まったく人気がないということでは無さそうであった。
「結構綺麗な町だね」
建物、道路はきちんと整備がされていて町並みも美しい。新しい建物の合間にときおり立っている年季の入った風格ある建物の独特の様相が町に溶け込んでいて、風情ある街並みを生んでいた。
「この町、グレンツェは元来二国にまたがる一つの町だったそうです。ですが、国同士の関係が悪化してからは国境を境に分断され、交流も途絶えてしまったそうです」
「だからお互いの国の文化が混ざり合った独特の建物が多いんだね」
「はい。もともとの町の中心に大きな川があって、そこを国境としていたようなんですが……今は完全に遮断されてしまって、国をわたる術がないんです」
「え、じゃあどうやって国境を超えるの?」
「分かりません」
情報屋から聞ける情報というのはその関連のものなのであろう。川のあるという方向を見ると、高く大きな壁で閉鎖されており超えることは難しそうである。改めて周囲を見ると至る所に軍人らしき人間が警戒しており、下手な行動はとれなさそうだ。
まずは素直に情報屋へと向かった方がよいだろう。
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