森の古城と仲間たち3
「んー、まあ。いろいろあったよ。リサに調べて欲しいことも見つかったから、後で詳しく話すね」
「ホント!?わかった。楽しみにしてる!あ、レオが二人のこと呼んでたよ。帰ってきたらすぐに来てほしいって」
「レオさんが?わかった」
「たぶん部屋にいると思うから、いってらっしゃいー」
そう言って促すリサに見送られ、エントランスからレオの部屋へと続く階段を上る。下から底抜けに明るいリサの声が聞こえてくる。どうやらダズに面白い話をしろとせがんでいるようだ。たじろぐダズを少しだけ不憫に思いながら、目的の階に到着する。
レオの部屋は建物の5階の奥にあり、たどり着くのも少々面倒だ。薄暗い廊下には人影はなく二人の歩く足音だけが響く。突き当りにうっすらと電灯に照らされた扉が見える。装飾の施された小奇麗な扉ではあるが、標識の文字はかすれて読めなく、暗闇に浮かぶ鋼鉄の無機質さが不気味な雰囲気を醸し出している。用がなければなるべく近づきたくはない。
扉をノックする。こんこんと小気味良い音が鳴るが、中からの返事はない。扉に手をかけると、鍵が掛かっていないのか、鈍い音とともに開く。
「失礼します……」
恐る恐る中へ入ると、山積み積まれた本や資料が出迎える。天井まで届く本棚からあふれ出たこれらの物体が乱雑に散らばっており、一言でいえば汚い。
「相変わらずだな」
ぼそり、ディルが呟くのでディーナは同意の意味を込めて苦笑する。
ごちゃごちゃになった床の中で一部、本たちを避けるようにして作られた通り道がある。そこから見えるワインレッドの絨毯が本来のこの床の色なのだろう。高級そうなだけに哀れだ。道の先に、大きな机がある。その上にもあらゆるものが積まれているが、他と異なる点、そこには人影があった。
机上に足を投げ出して、椅子にもたれかかるその人間は顔面を帽子で覆うようにして風景の中に埋もれている。
「レオさん。起きてください」
「人を呼んどいてこれかよ。起きろ」
「んあ?」
呆れと苛立ちと。二人の声にやっと気付いたらしく、帽子の間からくぐもった間の抜けた声が聞こえてくる。
「んー、何?あ、お前らか。お帰り」
先程まで爆睡していた男性は帽子の隙間からこちらを確認し、大きく伸びをすると「よ」と手を上げて挨拶する。顔にあった帽子を深々とかぶり直すと、二人へと向き直る。
彼はレオ・レルドス。ハンターの本部の責任者にして、彼らをまとめる指揮官だ。しかし、その風貌はどこか世間離れしていて独特の空気を纏っている。室内にも関わらず、つばのついた帽子を目深に被っていて表情は見えにくい。太陽のような金色の髪と瞳は風格さえ感じられるのに、それも覆い隠すような怪しさを放っている。
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