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エスケイプ アンド ハイド12

「すまんな。ディル。彼にはおまえのことをすべて話している」

「何故」

 己の存在が抱える危険性は重々知っているはずだ。軍に情報を打ち明けるなど以ての外。一体ティズイヴは何を考えているのか。疑心が憤りとなって胸をざわつかせる。

「安心していいよ、ディル・リルド。僕は君の敵ではない」

「そう言われて信用すると思うか?」

「まあ、十中八九しないだろうね。兵器が人間を信頼するメリットはない」

 長く伸びた袖口で口元を覆い隠して不適に笑う。表情が一切読みとれず、その真意は全くわからない。

「おい、ディルを兵器呼ばわりするのはやめろ」

「冗談だよ。ふふ」

 肩をすくめふざけたように笑みを漏らす。
 警戒を解くどころか、ますます不信が募るばかりだ。

「本当に信頼される気があるのか……まったく」

 ティズイヴはため息をつく。

「あー、ディル。聞いてくれ。悪い奴ではないんだ、本当に。信じられないとは思うが」

「そうだな、信じられない」

「そうだろうね。けど、決めつけるには尚早だ。僕の人となりをみて、信用に足るかじっくりと考えてからでも遅くない。――ああ、そういえば自己紹介がまだだったね。僕はジオ。この軍の研究施設の管理と統制を担っている」

 よろしくね。
 そう差し出された手をとるわけもなく。ディルは冷ややかな視線だけで応じる。

「こんな奴だが、特別権限を与えられた軍の研究者のトップだ。その知識と権威は必ずおまえの役に立つはずだ」

 これがトップとは、軍の研究者の底が知れる。
 何故ティズイヴはこの場所に自分を連れてきたのか。軍の研究者など、もっとも関わるべきではない相手のはずだ。彼だってそれを解っているだろうに。
 何か理由があるのか。考えたくはないがあまりよい予感はしない。

「ティズ、答えろ。どうして俺をこの場所に連れてきた」

「ああ、それは僕がお答えするよ」
 
 ティズイヴに代わり、ジオが前へと乗り出す。
 予感が確信へと変わる。

「これから君の身柄は僕が預からせてもらうから、よろしくね。ディル」

「どういうことだ……?」

 何を言っているのか理解できない。返答がまるで答えになっていない。瞬時にティズイヴを見やると、困ったように眉根を下げて頬を掻いた。

「……悪い。けれど、彼の言うとおりだ。これからお前は彼の下、科学班に身をおいてもらう。お前を匿うには、俺一人の力では限界がある。だがジオのもとであれば科学班という大きな組織でもってお前を守ることが出来る――」

「ふざけるな」


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