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黎明のこえ1
 
 むかしの夢をみた。

 満月のやさしさに照らされた、一面の花畑。
 
 連れだした君が、ほんのすこしだけ心を開いてくれたあの日の夢。

 君の笑顔がみたいと思った。

 あの日から、私たちはどのくらい前へ進めたのだろうか。

 どのくらい、近づけたのだろうか――


 風に揺れる花が、その花弁を宙へと解き放った。


 君が遠くにいってしまうような気がして、目が覚めた。


 ◆


「晴れ渡った空、すがすがしい風! 絶好の任務日和だな!」

「お前はもう少し緊張感を持て」

 見上げた空の日差しを目一杯に受け、大きく叫ぶジャルに呆れ顔のダズ。もはや見慣れたやりとりに、一同は特に気にとめることはしない。

「でも緊張するなあ……使われていないとはいえ、軍の研究施設だもんね」

 目の前の有刺鉄線に阻まれた外壁、その向こう側の建物を見上げて、ディーナは少しばかり緊張を表情ににじませる。
 廃棄されて数年の年月がたっているのだろう、雨風による浸食ですっかり色あせた外壁には所々ひびが見え、建物の風化を感じさせる。建物の周辺には放置された雑草が伸びきっており、その隙間から見える茶色の門は固く閉ざされ、長い間人の立ち入りがないという事を物語っていた。

「話通り、使われていない割には厳重な警備だな」

 建物を囲む外壁に沿うように、規則正しく並んだ軍人たちをディルが睨んだ。その腰に添えられた拳銃で、不審なものが近づくのを退けるのだろう。使われていない施設に割く人員としては不自然すぎるほど、その人数は多く、警戒を怠ってはならぬという緊張感が感じられた。

「この状況で大声を出すなんて、本当に君の頭はどうかしてるんじゃないのか?」

 先ほどのジャルの行動を叱責し、ダズは掛けていた眼鏡を指先で持ち上げる。上からの光を反射し、彼の瞳を隠した。

「リイラのおかげで俺らの存在には気づかれてねえんだから良いじゃねえか」

「そうだとしても、お前には任務に対する緊張感が足りてない。もっと自分の言動に責任を持つべきだ」

「はいはい。お前はいちいちうるせえって、姑かってんだ」

「……ですが、私が今かけている術は簡易的なもので、私たちの存在感を薄くしてるだけです。なのであまり大声を出してこちらの存在に気づかれてしまうとバレてしまいますよ。ジャル」

「えっ、そうなの?」

「だから言っただろ。お前はもっと状況に気を配って行動すべきなんだ」

「うるせー」

「まあ、あの程度なら大丈夫でしょうけど。潜入の際はこれ以上の警戒が必要ですから、気をつけてくださいね」

「おう、任せろ!」

「だから、声が大きいって言ってるだろ……」

 潜入任務の直前にしてはいささか緊張感に欠ける会話だ。
 そんな仲間たちの会話を耳にしながら、ディーナはこれから始まる任務の内容を心中で確かめる。



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あきゅろす。
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