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長い夢のエピローグ12
 

「お前のためなんだ。だから、リサ。今回の事はお前には関係ない。お前は何も知らなくていいんだ」

「あたしのためとか、わかんないよ。知ってるんだよ? 軍と関わる大変な事態だって、戦いになるかもしれないって……知ってる。知ってるの、だから関係ないなんて言わせない」

「リサ、わかってくれ」

 レオはまっすぐにリサの瞳を見つめ返す。
 吸い込まれるような赤。彼女の心をすべて反射しているような、深く、悲しげな色。

 その色が訴える想いに応えることができないことがひどくもどかしい。
 今回ばかりは、彼女の意志を叶えてはあげられないのだ。いままでとは状況が違う。彼女につらい思いをして欲しくない。その想いがゆえに彼女を傷つけてしまうことをどうか許してほしい。彼女の存在を守るために、こうすることしか思いつかないのだ。

 リサの瞳がわずかに伏せられた。憂うようなまつげがレオの視界から赤い瞳を隠す。諦観を、悲嘆を、失望を、すべてを隠してしまう。

「……そっか、わかったよ」

 再び顔を上げたリサの表情は笑顔だった。
 いつもと同じ、眩しいほどの笑顔。

「レオが言うんだから、正しい判断なんだよね。あたしは、大人しくしてるよ。それでいいんだよね」

「ああ、ごめんな。リサ。万が一危険が迫ったときは、お前のことはミリカに頼んである。彼女と一緒に西の拠点――ツキの元まで逃げてほしい。そうすれば、大丈夫だから」

「うん。わかった」

 リサは笑顔を崩さずに、深くうなずいた。

「大変なときに余計な気を使わせちゃってごめんね。レオ、頑張ってね」

 くるり、後ろを振り返ってリサはそのまま外へと向かっていく。
 何か言葉をかけるべきか、レオはそう思いはしたものの、ふさわしい言葉を見つける前にぱたんと扉の閉まる音がした。

「リサ……」

 これで、大丈夫。そのはずだ。
 だけど、なぜだろうか。最後に見せたリサの笑顔が頭から離れない。一抹の不安がレオの頭をよぎった。

「――レオ」

 突如隣から降ってくる声。
 レオは扉に視線を向けたまま、その声に応える。

「話の途中で急に消えたと思ったら、どこに行ってたの。メル」

「うん、ちょっと様子が気になって」

 白い羽をふわりとなびかせる、メルベル声色は緊迫感を含んだものだった。

「様子?」

「うん。城の外にね、妙な違和感があるような気がして。でも、よくわからなかったんだ」

「……違和感、ねぇ。じゃあもう少しだけ周囲の様子に意識を向けててくれる? 念のため、ね」

「うん、わかったわ」

 うなずいたメルベルは再びその姿を闇に消していく。

 何事もないと良いのだが。
 顎に手を添え、レオは空を仰ぐ。深く座り込んだ椅子が、軋んだ音をたてた。




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