ハロー、ベイビー 希望なのか 絶望なのか オレはあの一瞬を 忘れないだろう 【 ハロー、ベイビー 】 「ほら、見てごらん」 そう言われて覗き込むと大事そうに抱えられた小さな体。 「ナルト、って名前なんだよ」 「ナルト…」 ナルトと呼ばれた赤ん坊と、その赤ん坊を優しく見つめる四代目。 「仲良くしてあげてね、カカシ」 そう言って微笑む四代目は、いつもの“先生”とは違う“父親”の顔だった。 返事をしようとした、そんな時だ。 九尾が現れたのは… 「さ、里に、九尾が、現れました…!!」 緊迫する空気。 さっきまでの、柔らかな空気なんて一瞬で打ち消された。 その後は本当に酷いものだった。 壊される里に、傷付き倒れる人達。 あの四代目さえも―― 四代目は命がけで九尾を封印したのだ。 生まれたばかりの自分の子供の中に。 「―――なんでっ…!」 その事を混乱の中聞いた時、目の前が真っ暗になった。 なんで先生が死ななければならない。 そればかり頭を巡って、気付けばナルトの所に来ていた。 なぜかそこには誰もいなくて、ナルト一人がいた。 その身に九尾を封印された赤ん坊。 その名残なのか、腹には封印式が浮かんでいる。 なんで… なんで、なんで、なんで、なんで――― そればっかり頭を回って、最後には先生の顔が浮かんでは消える。 その繰り返し。 「お前が…」 奪った。 優しかった師を。 大事な仲間を。 全て、奪われた。 全部お前が――! 「あーうー…キャッ」 「!?」 ふいにナルトがこっちを見て笑った。 「っ、!」 「キャッ、キャッ」 無邪気に笑う何も知らないナルト。 思わず振りかざしたクナイを持った手がその瞬間止まった。 『仲良くしてあげてね』 そして思い出したのは先生の最後の言葉。 「…っ」 手に持っていたクナイが力無く床に落ちる。 オレはただその場で泣き崩れた。 そんなオレを、何も知らない笑顔で見ているナルト。 それは 希望なのか 絶望なのか その時のナルトの笑顔は、一生忘れられないだろう――― (100102) ただ、痛みだけが残る |