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カルマ



たとえ、
最後には自分が殺されようとも…







カルマ







「がっ…」


意味のない言葉を最後に目の前の男は倒れ伏した。

こうして自分はまた、業を背負うのだ。


「山本」


ヒトだったものの群れを避けながら近付いてくる人物。


「ツナ…」


そちらに目を向ければ、彼の白いスーツには無数の紅いシミが付いている。


「そっちは大丈夫だった?」

「ああ、問題ないぜ」


そう言って笑いかければ、向こうも笑い返してくれる。

だけど笑いかける顔は、どこかいつもと違う。


「ツーナ」

「っ、ごめん。大丈夫だから」


大丈夫だと言うツナの肩は、小さく震えていた。


分かっているよ。


いつだって優しい君。
そんな君が人の命を簡単に奪っていく事が出来ない事くらい。


小さく震える肩を抱き寄せる。


「…オレ達もこうして死んでいくんだろうね」


腕の中で呟くツナの声はとても静かで、震える肩とは正反対の声がやけに耳に残った。


「仕方ないんじゃね?」


自分の為。
仲間の為。

どんな理由を付けた所で命を奪っている事には変わりなく。

1つ1つが重くて、身動きが取れなくなりそうだ。


「…ごめん」


優しい君。
どうか謝らないで。
君は悪くない。


「オレは好きで選んだって何回も言ってんだろ。
だからセリフが違う」

「………ありがとう」


琥珀色の瞳が悲しみに濡れていた。


だけどいいんだ。


人の命を奪って生きて、たとえ最後には自分が殺されようとも。


君の温もりがこの手の中にある事の幸せに比べたら…



いくらだって、
業を背負ってやろう。












(090514)
君を失わない為、これからも奪って生きていく。



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