拍手ログ 誕生日にいちばんほしいもの(サソリ*) ・・・初めて会ったときの印象は、あまりいいものではなかった。 仏頂面で、無口で、はっきり言って怖かった。 それは彼の本体を見た時も変わらなかった。 けれど、気が付いたら、 自分でもビックリするくらい、好きになっていたんだ。 * 今日は11月8日。 あたしの好きな人、サソリさんの誕生日。 プレゼントを何にしようか何日も悩んだ。あの人の喜びそうなものなんて、あたしには検討もつかない。 デイダラさん辺りは知っていそうだけど、かぶったら気まずくなるし、何より自分で考えたかった。 そして結局いいアイディアはうかばず、ありがちだけどあたしは手作りのケーキを焼いた。 「・・・サソリさん、喜んでくれるかな・・・」 あたしは一つ決心をしていた。 もしこのプレゼントを喜んでもらえたら、サソリさんに自分の気持ちを伝えようと。 今日を逃したらずっと言えない気がするのだ。 そうこう考えてるうちに、サソリさんの部屋についた。 中に入ると、暁のメンバーがほとんどそろっていた。 サソリさんの誕生日を祝うために集まったらしい。 (・・・この中で渡すのか・・・緊張するなあ。) すると、当のサソリさんがこちらにつかつかとやって来た。 「いつまで入口に突っ立ってんだ?入れよ。」 「は、はい!」 テーブルを見ると、他の人たちのプレゼントが並んでいた。 デイダラさんのプレゼントは・・・な、何アレ? ・・・やっぱりアドバイスもらわなくて良かったな・・・。 そんなことを考えていると、サソリさんが振り返った。 「おい、お前、その箱・・・。」 「あっ。」 すっかり忘れていた。しかし実際に渡すとなるとやっぱり緊張する。 「あの、サソリさんっ、お、お誕生日おめでとうございます!」 あたしは勇気を振り絞り、ずいっとサソリさんの前に一生懸命ラッピングした箱を差し出した。 「・・・ケーキ?」 「はいっ!」 「お前が焼いたのか?」 「は、はい。お店みたく上手には作れませんでしたが、宜しかったら・・・!」 思わず視線をそらすと、デイダラさんや飛段さんがニヤニヤしながらこっちを見ているのが目に入った。 実はサソリさんが好きだと自覚した時から、よく他の人には相談に乗ってもらっていた。 なのでほとんどの人はあたしがサソリさんを好きなことを知っているのだ。 は、恥ずかしい・・・。 するとサソリさんは無言でリボンをほどき、包装紙を器用に開けていった。 「へえ・・・綺麗に出来てるじゃねえか。」 「あ、ありがとうございます!」 「でも、オレが本当に欲しいのはこれじゃねぇな。」 「えっ・・・」 サソリさんはほどいたリボンを手に持つと、こちらに近付いてきた。 あまりに近い距離にあたしが一歩あとじさろうとしたら、腕を掴まれた。 「さ、サソリさん?」 「目ぇ閉じろ。」 「え?」 「いいから。」 なにがなんだかよくわからないが、とりあえず言われた通りに目を閉じた。 すると、首に何かが触れる感覚がした。 目を開けると、あたしの首にリボンが巻かれていた。 「え?さ、サソリさん?」 「・・・お前、オレに惚れてるだろ。」 「へっ!?」 一気に顔が熱くなった。 「いつも見てただろ、オレのこと?バレバレだぜ。」 「な、な・・・」 バレバレ?あたしの思いは本人に筒抜けだったというのか。 恥ずかしさにうつ向いていると、上から再び声が降ってきた。 「・・・オレが本当に欲しいのは、お前自身だ。」 一瞬、時が止まったかと思った。 「・・・え?」 「何度も言わせんな、オレが欲しいのはお前だ、お前。オレもお前が好きなんだよ。」 その言葉で、頭が真っ白になった。 サソリさんは袖から手を出すと、あたしの首に巻かれたリボンを指差した。 「だから、お前がプレゼントになれ。今なら心よく受けとるぜ?」 サソリさんがあたしにリボンを巻いた意味を察し、あたしはまた赤くなった。 そして、 「・・・あ、あたしがプレゼントです。もらってくだ、さい・・・。」 あたしは消え入りそうな小さい声で言った。 するとサソリさんは嬉しそうに笑った。 「・・・ああ、最高のプレゼントだな。」 そしてサソリさんは不意討ちで、あたしの額にキスをした。 誕生日にいちばんほしいもの (それにしても、まさか本当に言うとはな。ククッ・・・) (さ、サソリさんが言えって言ったんじゃないですか!) (・・・よくあんなに格好つけて言えるよな。最初に惚れたのは旦那なのによ、うん。) (同感だな。) 091108 [*前へ][次へ#] |