感謝のきもち 一緒にいるだけで(6) 類からの問い掛けに、容易に思い描ける司との庶民派デート。楽しくなかったと言えば嘘になる。最初のダブルデートの動物園は最悪だったが、それ以外は満更でもなかった、とつくしは1人考えた。 つくしのその表情は代わる代わる、類としては見ていて飽きないわけではあるが、自分以外の相手とのデートを思い出されているとなると、あまり気分は良くない。 「やっぱいいや」 「はっ?」 「せっかく俺といるのに司のこと考えられるのも何か嫌だもん」 「いやいや、言い出したの自分でしょ」 「うん、俺妬いてるみたい」 「…おっつ…」 さらり、と話を遮れば理由もあっさり口にしたところでつくしは俯いてしまった。どうもストレートさに弱いらしい。そこがまた可愛い、そう思うこと自体も珍しい。 次第に頬が染まっていくものだから顔を少し近づけて、また一言。 「顔、赤いよ?」 「〜〜〜っ!」 「意外だった?」 類の普段にはない質問責めにつくしは成す術なく縮こまるだけ。逆に周囲の女性客の羨望と嫉妬、好奇心の視線だけがつくしに注がれているようでならない。 カチャ、とジェラートのスプーンを置けばつくしは鞄を抱いて一言、御手洗いとダッシュに近い早足で逃げていった。 「可愛いなぁ」 続く [戻る] |