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02




夢…

懐かしい夢を、見た…‥






「雛…雛……」

『なに、お母さん?』

「雛にコレをあげるわ」

『なにこれ…?』

「カメラよ
将来多分役に立つと思うから」

随分多分強調したね
なにに役立つの?』

「お金儲け」

『はい?』

「イケメンいたら撮りまくりなさい
お金ががっぽり入るから」

『あなた本当に母親?』

「フフフ…(黒笑)」

『………………』







あまり良い夢ではなかった。






『……ん、朝?』






ふと目を覚まし、体の上体を上げ周りを見渡してみるが…






『此処…何処?』






見たことのない場所でした。






つる日々草
Act.2:菊-キク-






落ち着け、落ち着け私。
とりあえず深呼吸をしよう(何故)






『すぅーはぁー、すぅーはぁーすぅ』

「あ、目が覚めましたか?」

『ぼギャオアァーーーー!?』






ぼギャオアァーーーーって…可愛くないな自分。
それより一体何!?


背後からの声に急いで振り返る、するとそこには…






「大丈夫ですか?

『あ、はい…大丈夫で、す!』






かなりのイケメンさん。


でもアレ…?
今頭って言わなかった?






「言いましたね(ニコッ)」

『這( ̄□ ̄;)』






黒!
何このイケメンさん黒!!

心読むし…
なにより頭って酷くないですか…?




警戒するようにお兄さんの顔を見つめる。
だが、お兄さんは先ほどから微動だにともせず笑顔を保っていた。






「先ほど思いっきり頭を打ったようだったので」

『あぁ…!』






そういう意味だったんだ!
てっきり望美ちゃんと同じ系統の人かと思っちゃった…。






『あの、す、すみません…
助けてもらったのに疑ってしまって…』

「別に良いんですよもう一つの意味でもありますから






……そうですか。
やっぱり望美ちゃん系統、か…





「そういえば、あなたは誰ですか?」






ですよね。
1番初めにそれを気にしますよね。


だって空から降ってくるなんて、絶対有り得ないもの(自分で?)






『えっと、私は櫻井雛です
貴方は…?』

「僕ですか?
僕の名前は武蔵坊弁慶です
気軽に呼んで下さいね」

『あ、じゃあ弁慶さんで…
私も雛って呼んで下さいね!!』

「はい(ニコッ)」






わぁ…
やっぱりこの人カッコいい。


顔も白いし、整ってて綺麗…
こういうのを美人さんって言うのかな?






『あの…弁慶さん?』

「何ですか、雛さん?」

『すみません、此処は何処ですか?』

「此処は京ですよ」






京…?
京都とか東京じゃなくて?






『すみません、京都とか東京ではなくて?』

「……いえ、その京都や東京ではないですね」






京都や東京じゃない…?


じゃあ此処は…






『何、処?』






そういえば随時和風の家というか…
古いものが多いというか…




そんな事を知識の無い頭で考えていると、私の袖から何かが落ちた事に気が付いた。


そもそもいつの間に着物に着替えたんだろう…






「雛さん、何か落ちましたよ?」

『え?あ、コレは…‥』






カメラ、だ…


今日見た夢で、昔お母さんに金儲けのためにもらったもの。
少し古ぼけた、ポラロイドカメラ…






「雛さん…それは何ですか?」

『あぁ、これはカメラです
……知りませんか?』

「いえ、初めて見ました」

『…………』






おかしいな
普通の人なら知っているカメラ…


そして、此処は京ということ…
頭が悪い私でも不思議な事がわかる…






「そのカメラはどうやって使うんですか?」

『あぁ、コレは…


弁慶さんちょっと良いですか?』

「…?はい」






弁慶さんに許可をもらった私は、カメラを弁慶さんの方向に向け、






――パシャ!―






と一枚撮影した。






「!?」

『良かった…まだ使えるみたい』






変な目的で貰ったとしても、このカメラはお母さんからもらった私の大切な宝物だから…






『良かった、壊れてなくて…』

「あの…?」

『あ、ちょっと待って下さいね!!』






そう言ってカメラから出てきた写真をパタパタと乾かす。
すると、黒い紙に徐々に色がつき始めていき、弁慶さんの姿の写った紙になった。






『よし…!
はい、どうぞ弁慶さん!!』

「これは…僕、ですか…?」

『うん!
これは私の宝物でこの機械を使って撮れば撮った物が紙に写って出てくるんだ!!』

「凄い…ですね」

『でしょ!!』

「…………」






私がニコニコとカメラについて話していると、弁慶さんは急に黙ってしまった…‥






『どうしたんですか…?』

「実は、僕はあなたを疑っていました」

『え?』

「いきなり空から落ちてきてそのような不思議な物をもっている…
僕たちには有り得ないことばかりです……」

『…………』

「しかも、あなたは京を知らない、そしてその話し方……


あなたは何処から来たのですか?」

『……ッ…!』






何処から来たのですか?




弁慶さんにそう言われた瞬間、胸の奥がグッと苦しくなった…‥


やっぱり、そうだよね…
いきなり降ってきた人の話を“信じて”と言っても、大抵の人は信じれるわけがない。




そして私は、静かに息を呑み込んだ…。






『私は、日本の鎌倉というから来ました
学校で友達と話していたら急に吸い込まれて濁流に流され…


気がつけば落ちていました』

「…………」

『信じては…もらえないと思いますが…』






こんなこと言っても多分信じてもらえない…


分かってるけど…






――ポタ…―






涙が出た。
涙の理由は良く分からない…


だけど…




疑われているのが、

寂しくて、


悲しい…。






「雛さん…‥」

『…………っ…!』

「泣かないで下さい」






そう言って弁慶さんは、自分の指で私の涙をそっと拭いてくれた。
顔を上げて弁慶さんを見ると、綺麗な笑み。






「確かに不思議なことです…
信じがたい」

『…………』

「でも、僕いいましたよね
“疑っていました”って」

『……え?』

「最初は疑っていましたが、雛さんの笑顔を見れば悪者ではないとすぐ分かりましたよ」

『本当です、か…?』

「はい。それに心を読めばもっとすぐに分かりますし

『這( ̄□ ̄;)』

「フフフ、冗談ですよ」

『(冗談に聞こえない…)』






聞こえない…
聞こえない、けど…‥






『私のこと、信じてもらるんですか?』

「勿論です」






そしてまた、綺麗な笑みで微笑む弁慶さん。
その笑みには先ほどの黒さも全く感じず、泣きたいほど心が温かくなった。
そしてなにより…


信じてもらえるのが、凄く嬉しい。






『弁慶さん…』

「何ですか?」

『ありがとうございます…』






笑顔でお礼を言うと、何故か弁慶さんは再び黙りこくってしまった。






『弁慶さん…?』

「……全く君は」

『え?』

「いけない人ですね」

『はい?!』

「クス、何でもないですよ」

『はぁ…』






とりあえず、一件落着…かな?






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